第3章 新しい環境
『ちょっと···いろいろあり過ぎて。自分の冷却期間って言うか、私が小鳥遊事務所の佐伯 愛聖ですって胸張って言える様に、ここでのスタートラインに立てるまでは研究生として時間を貰ったんです』
環「でも今はマリー、バンちゃんと一緒に事務仕事ばっかしてんじゃん」
『そうだね···もし浮上出来なかったら、万理を追い抜いて有能事務員になっちゃうかも?』
そういう生き方もあるかな?なんて笑いながら言って、みんなの顔を順に見る。
『だけどね、小鳥遊社長が···私の中に小さく輝くカケラがあるって言ってくれて。だから私は、そのカケラを大きく輝くものにする為にも、ちゃんとスタートしたい···から。だから、その為の···冷却期間』
一度は全てを投げ捨てるようにした私を、せっかく拾ってくれたんだから、きちんとしたい。
そう付け加えて、静かに微笑む小鳥遊社長に視線を移した。
小「だから、八乙女の所にいた時のキャリアはないと考えて貰っていいんだよ。でも、決して愛聖さんは事務仕事だけをしてる訳じゃない。君達が使っていない夜の時間にレッスン場で自主練してるからね」
え?
『社長、ご存知だったんですか?!』
小「もちろん知ってるよ。出先から戻ったら電気付いてるし、覗いて見たら愛聖さんが一生懸命に···この子達の曲をかけながらダンスレッスンしてたのを何回も見てるから」
陸「オレ達の、ですか?」
小「そうだよ?声をかけようとも思ったけど、あまりに真剣にやってたから···つい、見とれてしまったんだ。何曲かは振りをマスターしてるようだから、今度一緒にやってご覧よ。きっとお互いに吸収出来るものがあるだろうから」
···社長に見られていたとは思わなかったなぁ。
あれは完コピする為にやってたんじゃなくて、体を動かすのに曲とかなかったから。
申し訳ないとは思いながらも、何度か見せて貰ったみんなの曲でダンスレッスンしてただけなのに。
環「スゲーな、マリー。ちょっと見たくらいで振り付け覚えてるとか···みっきーは何回も練習してんのに」
三「環···オレにケンカ売ってんのか、お前。売るなら買うぞ??いや、その前にオレは泣くぞ?」
泣くの?いま?と真顔で返す四葉さんを慌てて止めながら、私は数回見ただけじゃないよと間に入った。