第14章 心の行方
社長からCM撮影の話が白紙になってしまったと聞かされてから、1週間程たった。
それまでは元々のスケジュールをこなしながらの日々が続いていたけど、それもあと少しで終わってしまう。
また、頑張ればいいか・・・
そんな事を考えながら、コーヒーサーバーからカップへと湯気を移す。
環「あれ?マリーって今日オフ?」
ガチャリと開いたドアから四葉さんがと一織さんが入って来て、もうそんな時間?と思わず時計を見た。
何をしていた訳でもないのに、オフの一日って早いなぁ。
『お帰りなさい。あ、ちょうどコーヒー落としたんですけど一緒に飲みませんか?』
環「飲む飲む!マリーが入れてくれんなら、飲む」
一「ただいま帰りました。四葉さん、まずは手洗いうがいてからですよ?佐伯さん、せっかくのお誘いですから私もコーヒーをお願いしても?」
『もちろんです!じゃあ、お2人が手洗いをしてる内に用意しますね』
食器棚からそれぞれのマグカップを取り出し、コーヒーを注いでテーブルに用意をする。
さほど待たずに戻って来た2人が、制服のまま私と向かい合わせに座ったのを見て、何となく小さな笑いを浮かべてしまう。
一「なにか、おかしな所でも?」
そんな私を見て、一織さんがカップに口をつけながらひとつ瞬きをした。
『いえ・・・何となくこんな風に向かい合わせになると、なんだか面接みたいだなって思って』
一「面接?」
『はい。制服姿の高校生と向かい合わせって、自分が先生になったみたいな気がして、ちょっと擽ったいっていうか』
フフッ・・・と笑いながら私もカップを手に取れば、一織さんがひとくちコーヒーを飲んだ後、私を見て小さく笑った。
一「佐伯さんが先生だとしたら、そんな担任のクラスの生徒は気が気じゃないでしょうね」
『どういう意味ですか?』
一「だってあなたは、ちょっと目を離すと何をするか分からない人ですからね」
・・・返す言葉が浮かばないです、はい。
環「俺もいおりんの言ってること、なんか分かる。マリーって、ちょっと天然っていうか、ドジっていうか。でも、マリーが先生だったら、俺スゲー勉強とか頑張るけど」
一「四葉さんは佐伯さんが先生じゃなくても勉強は頑張って下さい・・・放課後、居残りしなくてもいいくらいには」