第14章 心の行方
『社長、それってどんな?』
なんとなく、千が直々に提案して来たなんて聞けば若干・・・嫌な予感もするけど。
小「ここに収められている楽曲の全てを仕上げて、ミニアルバムとして発表するのはどうか?って。どう?いいお話だと思わない?」
・・・はい?
想像していた嫌な予感を大幅に飛び越えた社長の言葉に、一瞬、自分の耳を疑う。
小「それを聞いて僕も、それならせっかくだから発表する時にミニライヴもやっちゃう?って話したら、千くんもそれも楽しいですね、って言ってたよ?」
千が、楽しいって・・・
いやいやいや、その千が楽しみにしてるのって仕事がどうのってよりも、そこに行き着くまでのわちゃわちゃした感じがって事だと思うんですけど?!
っていうか、ミニライヴってどういう事?!
『あの!私はアイドルでもなくてアーティストでもなくて・・・その、自分で名乗りあげるのも変ですけど、一応・・・女優業がメインというか・・・だからそんな大々的なのは・・・』
小「大丈夫だよ。ボイストレーニングは前に言ってたように千くんが指導するって所も変更はないし、彼らも忙しいから、そう言った事はお互いのスケジュールを調整しつつ、どうしても時間が取れなかったら千くんが自宅でも構わないからって言ってくれてるし。宿泊になるかも知れないけど、その辺は愛聖さんは慣れてるだろうから」
宿泊?!
確かにRe:valeは忙しいから、私のスケジュールに合わせて・・・なんて言うのは無理なことかもだけど。
宿泊って!!
なんか、まんまと千が敷いたレールに乗せられている様な気がするんですけど?!
いやいや、その前に。
今更ではあるけど、自社の女性タレントを他社の男性アイドルの家に簡単にお泊まりオッケー出しちゃう社長って、変わってる??
まぁ・・・それも社長が私や千たちを信用してくれてると言うことなのかもだけど。
そもそもここの寮でさえ、私以外はみんな男性アイドル枠な訳だし。
チラリ・・・と社長を見れば、さっきと変わらずニコニコした顔を保っている。
小「歌なら以前も出していたんだし、歌唱力云々ってのは心配いらないと思うよ?だから、可能性を広げるって意味で、ね?」
『・・・分かりました』
もう、なるようにしかならない気がして、私は社長にそう返事をした。