第14章 心の行方
小「どうぞ?」
社長が声を掛けると、いつもの感じではなく慌てた様子の万理がそのドアを開く。
万「打ち合わせ中にすみません・・・社長宛に急ぎの電話が入ってまして・・・えっと、外線2番です」
小「急ぎの?分かった、ここで取るよ」
ちょっとごめんね?と私に言って立ち上がり、社長が自分のデスクにある電話から凱旋を受ける。
小「大変お待たせ致しました、小鳥遊です・・・はい、はい・・・えっ?!それはどうしてですか?!・・・えぇ、はい・・・はい・・・・・・そうですか・・・」
会話が進むうちに次第に表情が曇っていく社長に気付き、何となく万理の顔を見上げれば、万理は私の手元にある資料に視線を落として、なぜか悲しそうな目をして私の隣に腰を降ろした。
『万理・・・なにかトラブルなのかな・・・?』
電話中の社長の邪魔にならないように小声で聞けば、万理は小さく息を吐いたまま私を見つめた後に、そっと肩を抱き寄せた。
『ちょ、万理?』
万「俺は愛聖が頑張ってる事をちゃんと知ってるから・・・だから、挫けるなよ」
挫けるな?って。
急になにを言ってるんだろうと首を傾げる。
小「・・・そうですか・・・はい・・・分かりました。それでは・・・」
受話器を置いた社長が、大きな大きなため息を吐いて振り返る。
小「愛聖さん。化粧品メーカーのイメージキャラクターが白紙になったそうだよ」
白紙・・・って・・・
社長から出た言葉が信じられず、言葉が上手く出せずに呆然としてしまう。
小「それから、とても残念なことではあるけれど・・・アイドリッシュセブンの冠番組も、ね」
万「やっぱり、俺の聞き間違いじゃなかったって事ですか・・・」
私を抱き寄せたままの万理の手が、キュッと力が入るのを感じながら2人の顔を交互に見る。
『あの・・・白紙って、どういう・・・?』
突然の連絡が処理出来ずにいるまま、何とか言葉を紡ぎ出せば、社長は少し考えてからソファーへと腰を降ろす。
小「スポンサーの親元の意向だそうだよ。アイドリッシュセブンを起用するのはダメだ。それから、同じ事務所に所属している佐伯 愛聖も同じだって」
『私だけじゃなくて、アイドリッシュセブンのみんなもですか?!どうして急にそんな事が!私がなにかしてしまったとかですか?!』