第14章 心の行方
僕は愛聖なら、添い遂げてもいいと本気で思えるのに。
気持ちを伝えるのって、なかなか上手くは行かないようだ。
そもそも僕自身、感情や気持ちを誰かに伝えるなんて事が得意ではない・・・と自覚もある。
ここにいるモモにだって、過去に何度も・・・いや、今も時々か?
自分がどれだけモモに助けられていて、それを感謝してる事を伝えるなんて出来た試しがない。
あの日、万が忽然と姿を消してから僕は音楽をやめようと足を止めた。
けど、すぐに当時のRe:valeのステージや雑用の手伝いを名乗り出てくれてたモモが・・・それを決定させなかった。
万がいない僕なんて、どこで何をしても生きていけない。
そう、思ってた僕に・・・モモが光を掴ませた。
断っても振り払っても、貪欲にしがみついて、最後には大泣きしながら土下座までしようとして。
万の代わりに自分を。
万と活動してた期間と同じだけでもいいから。
Re:valeを、続けて欲しい。
世の中で生きて行くために呼吸しかしていなかった僕に、モモが・・・一緒に歩こうと背中を押した。
その時に踏み出した1歩は、後悔なんてしてない。
モモがいてくれたお陰で、いまの僕がいる。
もし、いま・・・万が姿を現したら。
お前がいなくなってからの僕たちの軌跡を、時間なんて関係なく自慢し続けてやりたいのに。
その張本人は、未だ行方が分からず。
どこにいるんだよ、万。
いま何をしているんだよ、万。
僕も、モモも・・・あの時とは違う歩幅で歩き続けているのに。
愛聖だって、同じ。
いろんなことがあったはずなのに、自分の足でちゃんと立って歩き出してる。
テレビ画面へと視線を向ければ、そこにはさっきとは違うキッチリとしたスーツ姿の愛聖が捜査会議とやらでお偉いさんにネチネチとやられてるシーンが流れてて。
プライベートシーンとそうでないシーンを、しっかりと演じ分けている。
万・・・早く戻って来ないと、お前が大事にしていた愛聖を僕が攫ってしまうよ?
なんて、ちょっとしたイタズラまで思いつくあたり、僕もどうかしてる。
そうだ、そんなイタズラをモモにも打ち明けたらモモはどんな顔をするんだろう。
そう思ってモモを見れば、どうしたのか急に咳き込み出す。
「モモ・・・?」