第14章 心の行方
❁❁❁ 千side ❁❁❁
普段は忙しくて、ゆっくりリアタイで愛聖の出てるドラマを見る事が出来ないけど、今日はまたモモと一緒に、見てる。
愛聖が掛け持ちして出演してるもうひとつの時代物の方も、前に1度だけリアタイで見たけど。
どちらのドラマも、その役に入り込んでるってのが伝わって来て。
ただ・・・時代物の方は役どころも遊女ってあたり、肌の露出が多めで。
とは言っても着ている物を脱ぎ捨てて絡むシーンなんて今のところはないけど、それでも時代背景的な衣装や役柄に合わせた露出には、僕だって少し・・・ハッとさせられるよ。
ましてやお相手役が、僕が昔からお世話になってる・・・あの人だから。
ストーリー展開上、撮影に関わるスタッフや演者から先々のストーリーを聞くことは御法度だから、この先どんな風になって行くのかは分からないけど。
それでも役を体当たりで挑戦してる愛聖は、キラキラと光る物が伝わって来る。
それは、いま見てる現代物のドラマからも同じように伝わって来るけどね。
あの愛聖が、キッチンに立って料理をするシーンだとか。
監督も随分と大博打だな。
・・・と、言いたいところだけど。
手元の手際の鮮やかさは、愛聖本人じゃないね。
まるで糸のように千切りされていくキャベツ。
飾り切りされていく野菜達。
愛聖には、ムリ。
視聴者や愛聖のファンだと言う世間一般の人達から見れば、それはごく普通に女優が調理シーンをこなしているように見えるのかも知れないけど。
僕にはわかる。
あれは愛聖じゃない。
だって愛聖は・・・ねぇ。
僕の家でキッチンを手伝うって言っても、危なくて見ていられないくらいの、だし?
前にモモとふたりで頑張る!と息巻いていたから様子を見てはいたけど。
結果・・・モモか音を上げて僕も見ていられない状況になって、愛聖にはキッチンからご退場頂いた位だから。
その時の愛聖は、拗ねて拗ねてイジケモード炸裂だったけど。
こんなんじゃお嫁に貰ってくれる人なんていない・・・とか、なんとか?
だから、全てを分かってる僕が貰ってあげるよ?って言ったんだけど。
本人は信じてないし、リップサービスだと思ってるし。