第14章 心の行方
「だってその忙しさの中にはユキもマリーもいるってことじゃん!オレ今から超楽しみ!・・・あっ!!忘れるトコだった!今日ってマリーのドラマ放映日じゃん!」
危ない危ない・・・リアタイで見れるなんてなかなかないからユキと一緒に見ようね!って言ってユキんち来たんだった。
バタバタと慌てながらテレビを付ければ、ちょうどドラマが始まったところで、マリー扮する役どころがキッチンで食事を作ってるところが流れてる。
・・・実際のマリーは、あんなに手際よくキッチンに立つなんてことはないから、きっと監督さんに指導されてのシーンなんだろうけど。
オレと同じ事を考えてるのか、チラリとユキを見れば、ユキもなんだか楽しそうな顔をしてる。
テレビの中のマリーは、子猫を戯れさせて笑う相手を見て随分と仲良しさんになったわね~なんて言いながら料理を盛り付けていて。
そんなマリーを見て子猫を抱き上げながら側に立つ相手が、なんだ?ヤキモチか?なんて頬にキスしたりしてて。
うぅぅぅ・・・なんだこのむず痒い感じは!
だって!
だってさ!!
相手役ってアイドリッシュセブンの二階堂大和じゃん!
同じ事務所にいて!
2人とも寮生活でさ!
仕事じゃなくても顔合わせることが多いし!
それなのにドラマ共演とか、ズルくない?!
ただでさえ女優さんとかって、ドラマや映画での共演がきっかけで熱愛!とかワイドショーを賑わせてるってのに。
もし・・・この2人がそうなっちゃったりとかしたら。
どうしよう!!
あ、いや、も、もちろん・・・お互いがお互いを選んでそうなったんだとしたら、祝福する覚悟はあるよ?
けどさ・・・それでもやっぱり、心のどこかでオレの方が先にマリーと出会ってんのに!とか、思っちゃうんだろうなぁ。
それはきっと、相手が誰であろうと同じなんだけどさ。
相手がユキ、だったら。
オレより先にユキの方がマリーとは出会ってるワケで。
それはバンさんも同じだけど。
バンさん・・・か。
今頃、どこで何をしてるんだろう。
まだ、音楽は続けてるんだろうか。
それとも、音楽はやめてしまったんだろうか。
バンさんがいなくなってしまって、ユキは歌うことをやめた。
そんなの絶対に嫌で、何度もユキを説得して。