第14章 心の行方
「別に、なんも。あ~、あいつら今頃、なんか美味いモンでも食ってんだろうな」
大阪の時も飯には間に合わなかったけど、ナギっちとかみっきーが俺らが食えそうなモンは確保しといてくれたからよかったけど。
壮「ははっ・・・夜にはきっと食べられ・・・環くん危ない!」
フラリと歩き出した俺をそーちゃんが引っ張って歩道に戻す。
「やっべ、危なかった。サンキューな・・・つか、スゲー高そうな車だった・・・見た?」
施設育ちの俺でも、パッと見りゃ分かるくらいの超高級車だった。
ピッカピカに磨かれて、きっとRe:valeとかくらい大物になったら、俺らもあんな車に乗れるんじゃないかって感じの、車。
な、スゲー車だったよな?って、そーちゃんに言おうとして、さっきよりも更に顔色が悪く見えるそーちゃんに驚く。
「そーちゃん・・・しんどい?おぶってやろうか?」
今にも倒れてしまいそうな感じのそーちゃんの前に立ち、腰を屈めて見せる。
壮「父・・・さん・・・」
「父さんって?」
壮「・・・なんでもないよ。行こう環くん」
表情を強ばらせたまま、そーちゃんがよろよろと歩き出す。
「やっばそれ貸して。俺が荷物持った方がそーちゃん楽だろ?」
大丈夫と言いかけるそーちゃんから無理やりカバンを受け取って肩に掛けた。
「それから、手・・・貸して」
壮「手を?」
「おぅ・・・俺がそーちゃん引っ張りながら走る。キツかったら言って。ゆっくりめに走るから」
壮「あはは・・・ゆっくり走ってたら遅れてしまうよ。でも、ありがとう環くん」
「ん」
掴んだそーちゃんの手が冷たく感じることに驚きながらも、それでもその手を離さずに走り出した。
いま、この手を離したら。
なんか分かんないけど・・・絶対ダメな気がした。