第14章 心の行方
❁❁❁ 環side ❁❁❁
壮「このままじゃ遅れてしまう・・・急ごう環くん!」
「なんで起こしてくんねぇんだよ!」
息を切らせて走りながら、時計ばっか気にするそーちゃんを振り返る。
壮「僕も眠ってしまっていたんだよ。そしたら乗り過ごしてしまって・・・とにかく、このままじゃ間に合わないかも知れない。タクシー捕まえ・・・環くん?!」
「走った方が早いだろ!」
タクシーなんてすぐ捕まるか分かんねぇし、それに、マリーがスゲー節約して俺らに頑張れって色々やってくれてんのに、タクシーなんか・・・使えねぇだろ。
壮「タクシーの方が・・・待って環くん!」
立ち止まってる時間なんてない。
とにかく仕事に遅れねぇように走るしかねぇだろ!
これまでにない勢いで走り続けて、後ろにそーちゃんの気配が薄いことに気がついて振り返る。
「そーちゃん・・・ハァ、ハァ・・・大丈夫か?荷物、持とうか?」
俺が足を止めた事でようやく追いつくそーちゃんに、バッグを受け取ろうと手を伸ばす。
壮「ど・・・して・・・?」
「俺の方が体力あるし、そーちゃん最近・・・顔色悪い気がするし」
壮「大丈夫、だよ・・・平気だから」
そう言って笑おうとするそーちゃんの顔色は、やっぱり悪くて。
アイドリッシュセブンのツアーが始まってからも、MEZZO"の仕事はたくさんあって。
マネージャーはみんなの方に付いてるから、MEZZO"の仕事の管理は全部そーちゃんがやってて。
どんなに疲れてそうな顔してても、そーちゃんは俺には・・・なんも言わねぇし。
「俺は・・・馬鹿だから、言わなきゃ分かんねぇから」
壮「・・・え」
「言ってくれよ・・・ヤダとか、ムカつくとか・・・しんどい、とか・・・」
そーちゃんが言ってくんなきゃ、分かんねぇことまだまだいっぱいあるんだよ・・・
壮「ハ、ハッ・・・うん・・・」
いつも、そーちゃんはこうだ。
俺がなんか言っても、大丈夫とか、平気とか、気にしてないとか。
・・・分かった、フリとか。
みんなには、ちゃんと言ってるのか?
なんて、ちょっとだけ考えたりしちゃうだろ。
俺にだけなんも言わないんじゃないかとか・・・不安に、なるじゃんか・・・
壮「環くん、どうかした?」
言いたいことだけ言って先に黙り込む俺を、そーちゃんが覗く。