第14章 心の行方
楽「じゃあな。そのうち飯でも行こうぜ?」
『あ~・・・うん、そうだね』
楽「なんだよ変な返事しやがって。先約でもあんのか?」
食事にでもって言われて、頭の片隅に不機嫌な千が浮かんでしまって曖昧な返事をした私を、今度は楽が不機嫌さを丸出しにして覗く。
『いやぁ・・・ほら、えっと・・・私って結構モテモテだからさ!』
普段から会話の中に千や百ちゃんの名前を出すと不機嫌さを顔に出す楽だから、ここは笑って誤魔化してしまえば・・・なんて考えたのも、甘く。
楽「また千さんかよ」
小さな不機嫌の塊が、楽の口からこぼれ落ちる。
『言っとくけど!私だって千の誘いを断ることだってあるんだよ?この前それをしたから、今度またね?って言った手前、約束は守らないとだし』
ちょっとだけ焦りを隠しながら言えば、楽は楽で、ハイハイ・・・と軽く流してしまう。
『でも、美味しいお肉が食べたいから・・・楽がお店をリサーチしてくれたら嬉しいなぁ、なんて?』
ね、いいでしょ?
・・・とか、我ながらこんな、ぶりっ子キャラは似合わないのはわかってるけど!
それでもニコニコして入れば、楽もそれを感じたのか吹き出してまで笑う。
楽「お前がそこまでして肉が食いたいなら、考えといてやるよ・・・じゃあな」
ひらひらと後ろ手に手を振りながら、楽は姉鷺さんとドアを抜けて行った。
『そこまでしてって・・・私だってかわい子ちゃんキャラが似合わないのは自覚あり!なのに』
複雑な顔をしながら呟けば、今度は社長が笑い出す。
小「モテモテの愛聖さんは大変だね。これじゃ、僕が食事に誘う順番は相当後になりそうだよ」
『社長は別ですよ?最優先候補です。だからいつでも誘ってください。あ、ちなみにアルコールはなしで』
以前晒してしまった醜態を思い出して、両手で顔を覆う。
小「じゃあ、いまのこの仕事が終わったらお疲れ様会として2人でご飯食べに行こう」
『はい!ぜひ!』
穏やかに笑う社長に、これでもかってくらいの元気な返事を返して小さくガッツポーズを取る。
そうと決まれば尚更・・・頑張らなきゃ!と自分に喝を入れて、支度を進めようと鏡に向かい合った。