第3章 新しい環境
『最後に会いたいと思った人に会わせてくれるなんて、神様も粋な事してくれたなって。だけど自分の置かれてる状況を知られたくなくて、思わず···逃げちゃった』
住む所も、仕事も、行く所もなくて。
そんな自分を、知られたくなくて。
『でも、追いつかれて引き止められた時、昔の万理を思い出して···助けてって、縋っちゃった』
万「あんな風に助けてって言われて、俺も昔の愛聖を思い出したよ。泣きながら学校から帰って来て何事かと思ったら、頭にカマキリが止まってて怖い···とかさ。カマキリくらいで泣きじゃくってた頃は、ホント可愛かったよなぁ」
え、カマキリ···?!
ちょっとそれって!!
『私が小学生の時の話でしょ!!』
万「そうだね、ランドセルだったからね。でも、俺と愛聖はそのくらいの頃からの腐れ縁ってヤツなんだよ」
万理が笑いながら言えば、みんなもなるほど···と妙に納得して行く。
万「で、愛聖は一応メディアに顔出してた有名人だったし、どっかその辺でお茶しながら話すって言う状況でもなかったから俺の家に連れて帰ったんだよ。その後にいろんな話を聞いて、行く所ないんなら、状況が落ち着くまで一緒に住めば?って俺が提案したんだ」
まさかその翌朝に、小鳥遊社長が万理の家に訪ねて来るとは思わなかったけど。
一「今の話からして、ひとつ屋根の下になんの障害もない男女が二人、夜を明かしたって事ですよね?しかも万理さんはひとり暮らし···となると···」
ナ「マリー···ベッドでバンリは紳士でしたか?それとも···野獣、」
三「アホか!!なんつーこと聞いてんだよ!!」
ナギさんの真剣な顔での言葉に三月さんがツッコミを入れる。
大「そうそう。男女の秘め事は深く聞いちゃダメだよな」
あれ?
壮「大和さんもさり気なく話を掘り返すのやめましょう。これは万理さんと愛聖さん、二人のプライバシーだから」
万理が誤解されてる?
『あの、誤解のないように言いますけど。万理は別にナギさんの想像するようなオオカミではないですよ?紳士···という言葉が当てはまるかどうかは分からないけど、ベッドにいても部屋にいても万理はいつも優しいんです』
ね?と万理を見れば、その反対側で社長がお茶を吹いて咳き込んだ。