第3章 新しい環境
テーブルに戻り、バレないように小さく息を吐いてから前を向いた。
『さっきの七瀬さんの質問の答えを踏まえて、みなさんに話したいことがあります···いい、ですか?』
なんか、緊張する···
これまで受けてきたオーディションとか、そんなのとは比べ物にならない位の···緊張感。
でも、ここまで来たら私も腹を括って···というのは大げさかも知れないけど。
三月さんが言った、苦しいより楽しい方がいい···その言葉を心の根底に置いて話し出した。
『実は私、小鳥遊社長に声を掛けて頂く前は···八乙女プロダクションに籍を置いてました。そこでの活動中で···』
母さんを亡くしたこと。
その辺りから仕事が上手く行かなくなって激減して行ったこと。
あの···夜のこと。
全てを包み隠さず話終わる頃には、誰もが無言で···
『それで、ビジネスホテルや漫画喫茶を転々としてて、そんな生活も嫌になって···生きてても意味がない、こんなに広い世界で私がひとりいなくなっても誰も気付かない。だったらいっそ···』
大「まさか、とは思うけど」
はぁ···とあからさまにため息をついて、二階堂さんが私に言った。
『その、まさかです。でも、どうせなら···昔たくさん遊んで貰った優しい万理お兄ちゃんに、最後に会いたかったなって思ってたら』
万「偶然、会ったんだよ愛聖と」
環「おぉ、スゲーなバンちゃん」
万「まぁ、それでもあの時の愛聖は俺を振り切って走って逃げたけどね」
陸「でも万理さんは、どうしてすぐにその人が愛聖さんだって分かったの?」
そう言えば、あの時。
万理は私を見て、すぐに私だって分かってた。
その時は私も冷静な状態じゃなかったから、いま七瀬さんに言われるまで···忘れてたけど···
万「分かるさ···愛聖がメディアに出始めた頃から、ずっと見てたんだから」
ナ「それは、ファンとしてデスか?」
万「もちろんそれもあるよ」
陸「それもって?他にもあるの?」
万「ん~、いろいろ···かな?」
環「いろいろって?」
三「こら!今は愛聖の話を聞けっつーの!お前ら小学生か!」
身を乗り出すかのように万理を質問攻めにする二人を三月さんが座らせて、それから私に続きをと目線をくれる。