第14章 心の行方
楽「だからってお前もそうならなくたっていいだろ。周りをよく見れば、もっと若くてイケメン揃いだろうが」
『若くてイケメン?・・・あぁ、そうだね!』
楽「だろ?」
『千も百ちゃんもずっと昔から知ってるし?』
楽「そうじゃねぇだろ!もっと近くにいるだろって話だよ!」
『・・・誰のこと?』
楽「お前・・・ワザと言ってんだろ!!」
ピクリと眉を顰める楽にバレたか!とべーっと舌を見せて笑えば、それを見ていた姉鷺さんが肩を揺らして笑い出す。
姉「まったくアンタたちは、そんな仲良し兄妹みたいなケンカすんのやめなさいって」
楽「誰がこんな破天荒なやつのアニキだってんだ!」
『破天荒って酷くない?!こっちこそ、そんな自意識過剰すぎなお兄ちゃんなんてお断り~!』
姉「兄妹ゲンカってのは、ものの例えでしょうが・・・」
子供の頃は自分がひとりっ子だった事や留守番がちだった事もあって、お兄ちゃんがいたらなぁとか思ってた時もあったけど。
それはそれで、当時の万理や千がいたし。
その当時は、激甘と激辛の組み合わせではあったけどね・・・
それに小さな子供の頃は、遊んでくれたお兄ちゃんもいたし。
『お兄ちゃん、かぁ・・・』
姉「なによ急に、そんなしみじみとしちゃって」
『ん~、実は私が凄い小さい頃にね、何度か遊んでくれたお兄ちゃんがいたの。父さんが亡くなって少ししてから、母さんがお弁当作って出掛けるよって感じで行った場所にお兄ちゃんと、そのお兄ちゃんのお父さんがいて』
楽「それって、もしかして愛聖のお袋さんが再婚を考えてたとか?」
急な思い出話に楽が身を乗り出すかのように加わってくる。
『私もその時2人を見て、泣きながら新しい父さんなんていらない!って、母さんに言ったことを覚えてる。けど母さんは、母さんにとっても父さんは1人だけだよって私を抱きしめてくれた』
楽「じゃ、一体誰だったんだ?」
『それも今となっては分からないんだけど、ただなんとなく覚えてるのは・・・その人といる時の母さん、ちょっとだけ幸せそうで、綺麗だった気がする』
もしかしたら、私が泣いて騒がなかったら・・・あるいは・・・って事もあったのかも知れないけど。
姉「きっと愛聖のお母さんは、その人の事が好きだったのね」
楽「・・・かもな」