第13章 デビュー会見と、そして・・・
『そうだ!昨日みんなから聞いたんだけど、アイドリッシュセブンのアルバムツアーあるって』
万理に手伝って事務所の朝掃除をしながら、寮で昨日聞いた話を伝える。
万「そうだね、これからもっともっと忙しくなるんだよアイドリッシュセブンは。ただちょっと心配なのは、MEZZO"として先に活動している壮五くんと環くんはアイドリッシュセブンとは別の仕事との兼ね合いもあるから、その分いろいろと負担が大きくてね」
撮影を2つ抱えてる愛聖なら、その忙しさは分かるだろ?と言いながら万理が床にモップを掛けていく。
『ツアーかぁ・・・デビューしたばっかりなのに、みんな凄いね!でも、その間はずっと帰って来ないと思うと、ちょっと寂しいかも』
全国規模であちこちに行くとなると、寮に帰ってくるのは簡単な事ではないし、その間は寮に1人で過ごす事を考えると・・・ね。
『万理もみんなと一緒に・・・』
行っちゃうの?と言いかけて、口を噤む。
なんとなく、さっき一織さんに言われた事が引っかかってしまって・・・
万「なに?」
『なんでもないでーす!さてと、窓拭き終わったから雑巾濯いでくるね』
数枚の雑巾を掴んで万理の横を通り過ぎようとすると、モップ掛けをしていた万理の手が止まる。
万「俺は行かないよ。ツアーにはマネージャーの紡さんが同行するしスタッフもいるから。それに、俺は事務所の仕事があるかね・・・忘れたの?俺が自他ともに認める有能事務員だって」
『自他ともに認めるって、自分で有能とか言うかな普通・・・』
わざとらしくそう返して、自分の手元の雑巾へと視線を落とす。
万「だから、みんながいなくて寂しいなぁ・・・なんて、考えなくてもいいって事だよ」
小さく笑っているのを感じて顔を上げれば、モップの柄の上に両手を乗せてニコニコとする万理がいた。
『・・・バレました?』
万「お見通しです」
たったそれだけの言葉を交わしながらも、寂しいって思ったことがバレている気恥しさを笑ってごまかした。
万「それにね、みんなが留守にしてる間は愛聖が寮で1人になるのが危ないからって、俺に期間限定で寮生活をするようにも言われてるんだよ」
『そうなの?!・・・じゃあ、ご飯の心配はいらないって事だ!』
万「あのなぁ・・・そっちの心配が先かよ。ま、その心配もいらないのは正解」