第13章 デビュー会見と、そして・・・
岡「女優さんていうのは様々な役を演じてますが、時には役柄のイメージが定着して同じような役をずっと期待される人もいます。例えば、お母さん役ならこの人、悪女役ならこの人、とか。ですが佐伯さんの場合は幅広い役を同時に演じ分けるというあたり、前事務所での教育が素晴らしかったという事なのでは?」
コトン、と音をさせながらオレたちの前に飲み物を置くおかりんでさえ、そう言う。
「だよね。カメレオン女優って訳じゃないけど、本当のマリーはどれだ?って思っちゃうよね?ユキもそう思うでしょ?」
半ば同意を求めるようにユキを見れば、ユキはフフッ・・・と笑ってオレを見た。
千「そうね・・・でも、どんな愛聖だって僕は愛してるけどね」
「キャー!ダーリンイケメン!ユキにそんなこと言われたらオレ死んじゃうかも!」
千「じゃあ、モモには言わない」
「言ってよ!!」
千「ダメ。言ったら死ぬから」
クスクスと笑いながら返すユキにオレも釣られて笑って、またテレビ画面へと視線を戻せば、そこに映るのは帯を解かれて着物が落ちたマリーの・・・色白な背中で。
その背中を艶めかしく手探りながら押し倒していく俳優に、なんだかムッとしてしまう。
ー 主さんのお好きなように・・・抱いてくんなまし ー
そんなセリフの後、衣擦れの音と共にゆらりと灯りが揺らめいて場面が変わる。
岡「はぁ・・・なんだかため息が出ちゃいますね」
ほんのりと頬を色付かせたおかりんが、本当にため息を吐きながら呟くのを聞いて思わずジッと顔を見てしまう。
「なんでおかりんが照れるんだよ」
岡「いや、それはそうでしょう?あんなおキレイな女性にあんな風に言われたら、僕だったらもう・・・いろいろ大変な事になっちゃいますよ」
「いろいろ大変なって・・・おかりん、まさかマリーで変な想像とかしてないよね?」
千「そういうモモは?」
オレたちのやり取りを聞きながら、すまし顔で言うユキに苦笑を見せて、絶対ない!とピースを向ける。
でもこれがきっかけで、やたらに脱ぐ仕事が増えたらヤダなぁ・・・なんて、思うオレもいて。
なんかモヤモヤする!とひと叫びして、CMが切れたテレビ画面へと視線を向けた。