第3章 新しい環境
三「ん?いや、オレもいるよ。ひとりだけここにいるのも寂しいだろ、な?」
正直、三月さんの言葉はありがたいと思った。
変なタイミングで席を離れてしまって、それは自分がカップを取り落としたせいではあるけど···
そのせいで、話の腰が折れてしまったというか。
小「三月くん、愛聖さんは大丈夫そう?」
ひょこっとカウンターの向こうから覗く社長に、三月さんが大したことはないけど念の為だと答える。
小「そっか、それなら良かった。少し、話がしたいんだけど、いいかな?」
社長がいう···いいかな?というのは、きっと私と二人でって事なんだろうと察した三月さんが、誰かがいてくれるなら自分でも社長でも変わらないからと場を離れた。
『社長が今、私と何を話したいのか、何となく分かります』
小「随分と察しが早いね」
『そうですね···前の社長は、まぁ···ご存知の通り、言われる前に動け!っていうタイプで顔色を伺いながら···って事が多かったし、そういった意味では···』
話しながら言葉を濁すと、社長は彼の言いそうな事だねと苦笑を見せた。
小「僕の考えとしてはね、もう少しみんなと馴染めてから僕立ち会いの元でここへ来た事情をって思ってたんだけど。さっきの陸くんの素朴な疑問も、ちょっとびっくりしたけどいい機会だと思うし、今なら僕も万理くんも側にいるから」
『そう、ですね···』
いつかは、私の過去を話さなきゃいけないとは思ってた。
別に隠し続ける事もないし。
ただ···知り合ったばかりのみんなに、なんて説明すればいいの?
私の方がキャリアは上だけど、気にしないで?なんて言えるはずもない。
小「僕から、話してもいいよ。ただ、あの子達は···キミの過去を知ったからって、態度を変えたりするような事はない。そこは社長の僕が胸を張って保証する。とは言っても、僕は愛聖さんほど魅力的な胸は持っていないんだけどね」
む、胸って···その胸?!
「社長···それセクハラ発言ですよ?」
思わず笑いながら言えば、社長も追いかけで笑いだす。
小「やっと、笑ったね。さっきまでは深刻そのものって顔をしてたけど。その笑顔が出来るなら、何も問題はないよ。さて···三月くん、そろそろ冷やすのはいいみたいだから、救急箱頼めるかな?」