第13章 デビュー会見と、そして・・・
大「オレに?オレに出来ることなら別にいいけど」
『二階堂さんにしか、出来ないことです』
大「で、なに?そのお願いとやらは」
二階堂さんが私と目線を合わせるように少しだけ屈む。
『私を、少しの間でいいんで抱きしめ続けてくれませんか?』
大「・・・は?!」
『今から私、佐伯 愛聖 を脱ぎ捨てて本格的に裸になるので・・・お願い出来ますか?』
大「あ、いや・・・裸って・・・」
目を丸くしてたじろぐ二階堂さんを見て、慌てて言い直す。
『こ、心のことですよ!別にここでオールヌードになるとは言ってませんから!』
大「あ、あぁ・・・なるほど・・・はぁ、びっくりした・・・」
さすがにいきなり私がここで裸を晒すとか普通ないでしょ?!
大「つうか、なんの心境の変化?」
『心境っていうか、変にいろいろ意識しちゃって上手くのめり込めなくて。じゃあ、それをどうしたらいいか?って考えたら、1度リセットしてみようかな?って思って。だから、空っぽになった私を二階堂さんで埋めつくして下さい・・・まぁ、正確に言えば二階堂さんの役柄で、ですけど』
もし、ここに八乙女社長がいたら。
きっと私に、何をしてるんだ!なんて怒るかも知れないけど。
他に思いつく打開策がなかったから。
私の話を聞いて、う〜ん・・・と少しだけ何かを考えていた二階堂さんが、漸くその目を開いて私の肩をポンッと叩いて両手を広げる。
大「お前さんがそうするなら、オレも同じように二階堂大和を脱ぎ捨てて、中身を入れ替えるよ。それならお互い様って感じだろ?って事で、ほら・・・来いよ」
じゃあ、遠慮なく・・・と、数歩進んで二階堂さんの腕の中に入り込み、胸元に顔を寄せる。
肌の温もり、纏う香り、そういったものを感じ取りながら脱ぎ捨てて空っぽにした心を埋めていく。
離れた所で百ちゃんが何かを叫んでるのが聞こえて来るけど、いまはそんなのお構いなしに集中する。
大「愛聖、アイツらめっちゃくちゃこっち見てる」
私を抱きしめながら二階堂さんがクスクスと笑い、どうせならいつも構われるお返しだなと、私の髪や額、目元や頬にさりげなく唇を寄せたり、首筋に顔を埋めては、外野の反応を楽しんでいた。