第13章 デビュー会見と、そして・・・
百「こんにちわーっ!」
撮影がまだ始まらず開け放たれたままの入口に、大きな袋を揺らしながら見知った姿が見える。
岡「すみません、お忙しいところにお邪魔致します」
元気いっぱいのキラキラ光線を放ちながら入って来る百ちゃんの後から、岡崎さんが深々と頭を下げなから遠慮がちに現れた。
・・・って、事は?
百「ユキも早く早く!」
・・・ですよねぇ。
だけど、とりあえずいまの状況からはなんとか抜け出せる!
心の中で大きくガッツポーズを決め込めば、二階堂さんは盛大なため息を吐きながら私を解放してくれた。
大「また面倒なのが増えた」
やれやれと言った感じで眼鏡をクイッと掛け直し、パタパタと駆け寄る百ちゃんと、それとは正反対に静かに足を進める千を交互に見た。
百「監督さん!お邪魔しまーっす!はいコレ差し入れ〜!」
まず先に監督へと挨拶をして差し入れを配り出す百ちゃんを見ながら、今ならこっそり抜け出て深呼吸くらい出来るかも、とそっと後退りをすれば背中にトンッと小さな衝撃。
二階堂さんは変わらず隣にいたし、百ちゃんは監督の所にいるし・・・千は・・・とそこまで考えてみてザッと振り返る。
千「コソコソとどこに行くのかな?」
『ちょっと野暮用・・・が・・・アハハ・・・』
千「これから撮影が始まるんだろう?いま向こうで聞いたけど、今から撮るシーンは彼との熱々ラブシーンだって」
熱々・・・誰ですかそんな事を千に吹き込んだのは!!
思わずスタッフの方を見れば、それはそれはファンのみんなが見たら黄色い悲鳴を上げそうなエンジェルスマイルを浮かべている。
間違いなく、天、だね。
千「愛聖。そんなに緊張するなら、リハは僕が代役してあげようか」
リハ・・・その言葉を聞いて、さっきの天の行動を思い出し一気に体温が上昇してしまう。
千「そんなに恥ずかしがらなくていいのに。リハって言っても、これくらい僕たちには日常の事だろ?」
『違うって!変なこと言わないでよ、気が散る!とりあえず1回、通路で深呼吸してくるから!』
千「なら、僕も一緒に行こうか?」
『お断りします!』
クスクスと笑う千を置き去りにして、歩幅も大きく通路へ出る。
なんでこんな時にいろいろ勢揃いなの?!
若干ウンザリする気持ちを抑えながら、大きく、大きく、深呼吸した。