第13章 デビュー会見と、そして・・・
『え・・・天、それって・・・』
「ホントはずっと、アンタに触れたかった。けど・・・急にこんな事して、イヤだったよな?」
ここまで言えば、ボンヤリさんの愛聖だっていい加減に分かるでしょ。
これが、この後の撮影での流れだって事に。
どうなの?と目だけで聞けば、愛聖は何度か瞬きをして、1度ゆっくりと目を伏せてからボクを見上げた。
『イヤ・・・なんかじゃ、ないよ。ただ、突然だったからビックリしただけ』
「なら、良かった。なぁ・・・続き、しても?」
潤ませた瞳を揺らしながら、愛聖が小さく頷く。
ボクとしては、ここまで付き合ってやればいいとは思うけど、せっかくだから少しだけ構ってみようかと胸の奥の小悪魔が疼き出す。
「こっちを見て・・・そのまま全部、オレに預けて」
潤んだ瞳を見つめたまま愛聖の頭を掻き寄せて、その肩口に顔を埋めて、耳に、首筋に、触れるだけのキスを落とす。
『ちょ、っと天・・・?こんな、の・・・台本にな、いよ』
体を捩ろうと藻掻く愛聖のウエストラインをゆっくり撫で上げれば、ピクリと震える愛聖の肌。
これくらいで勘弁してあげるかな?
「・・・なんてね」
ふぅっと耳元に息を吹きかけ体を解放してやれば、壁に凭れながらヘナヘナと座り込んで行く。
「それだけ脱力したなら、緊張感は解けたんじゃない?」
いたずらに笑って、ほら立ちなよ?と手を差し出せば、真っ赤な顔をした愛聖がボクを正面から見据える。
『リハだって言ったのに、アドリブ入れるとか聞いてないよ!』
「ボクはリハに付き合うとは言ったけど、二階堂大和とのシーンをだなんて、ひと言も言ってないけど?」
シレッと言って返せば、それはそれで愛聖が膨れていく。
「そんなに膨れてると、せっかくのメイクが台無し。これくらいで腰抜けてる様じゃ・・・愛聖もまだまだなんじゃない?」
『う、うるさいよ!天の意地悪!ばか!』
差し出したボクの手をペチッとひとつ叩いて愛聖が駆け出していく。
前にも言ったよね?
ボクだって・・・楽たちと同じお腹を好かせたオオカミかもよ?って。
忘れたの?
通路に顔を出してパタパタと走り去る後ろ姿を見送りながら、ボクはその姿が見えなくなるまでクスクスと笑った。