第13章 デビュー会見と、そして・・・
『社長、プレッシャーかけるのやめましょうよ・・・』
これからのシーンは、なるべく本番まで考えないようにしてたのに。
小「僕は別に気にしてないから、堂々と思いっきりやっちゃっていいからね?」
『社長!』
楽しそうにニコニコとする社長におかわりのお茶を入れながら言えば、これも仕事だからと覚悟を決めるしかないなと思えて来る。
せめてNG連発だけは避けたい。
そんな事を考えながら、甘く焼かれた卵焼きを口に入れる。
二階堂さんもモヤモヤしながら、ひとりで食べてるんだろうか。
それも逆に、変に意識しちゃいそうだよなぁ。
なるべく自然に、ストーリーの流れに沿って・・・となると、やっぱり普段と変わらずにいる方がいいよね?
『あの、社長?二階堂さんは楽屋にはいるんですよね?私やっぱり、お弁当誘って来ます。すぐ戻りますから』
返事を待たずに箸を置いてドアを開ければ、そこにはこれから声を掛けようとしていた相手が立っていて。
大「あー・・・お兄さんも一緒に食べようかなって思ってさ?」
『ちょうど呼びに行こうと思ってたんです。どうぞ?』
なんとなく目が泳ぐ二階堂さんを見ながら、もしかして緊張してる?と空気を読む。
『二階堂さん、この後の撮影ですけど・・・私、割り切りますから思いっきりどうぞ?』
大「思いっきりって、あのなぁ・・・お兄さんもいろいろと大変なのよ・・・覚悟が」
『だから、カメラが回ってる時は、私は佐伯 愛聖 じゃないから、楽しく撮影しましょう。ほら、いまの2人って、まぁ、その、こ、恋人関係ですし』
大「そうだけど・・・ま、いっか。このドラマ、アイツら毎回録画してみんなで鑑賞会してるけど、オレ達は二階堂大和でもなく、佐伯 愛聖 でもないんだしな・・・いやでもなぁ・・・ハハッ・・・」
二階堂さんが言いたい事は分からなくもない。
だって以前の放映シーンで、雨宿りしてた私を自分の傘に招き入れて肩を抱いただけで凄い歓声が上がってたしね。
それを考えると、ちょっと・・・いやいやいや。
『しっかりしろ佐伯 愛聖 !』
大「え?!急になに?!」
突然声を張った私に驚き二階堂さんが目を丸くする。
『私専用の特別なおまじないです』
さ、食べましょ?と促して、私はまた箸を掴んだ。