第13章 デビュー会見と、そして・・・
何を話しているのかは僕たちがいるこの場所だと聞こえないけど、監督が少し考えて頷いている所を見れば、愛聖さんが何かを提案した事が承諾されたんだろうと解釈することは出来る。
愛聖さんが何度も丁寧に監督に頭を下げて、元の位置まで戻る。
壮五くんには何も告げず、ただにこやかな笑顔を見せて・・・それからそっと、壮五くんに大丈夫だからとハグをするのが見えた。
ー 5秒前!・・・3・・・2・・・ ー
パチン!とカチンコが鳴らされて、それがカメラの回り出す合図となる。
「僕と・・・僕と一緒にここから出よう。君がいつまでもこんな所にいるなんて・・・僕は耐えられないんだ」
『それはダメでありんすぇ。わっちはもう、ここでしか生きていけありんせん人間でありんすから・・・』
静かに微笑みを浮かべながら、愛聖さんが壮五くんを見つめ返す。
「身請け金なら、僕が財を投げ打ってでもなんとかする。だから、僕と一緒に・・・行こう」
切なげに、でもどこか悲しげな表情を浮かべる壮五くんが愛聖さんの手を引いて立ち上がらせようとする。
だけど彼女は、その手を自分へと引き寄せ・・・そのままの流れで、緩めた着物の胸の中へと引き入れる。
「な、にを・・・?!」
『どうしてでありんすか?主さまは今宵、わっちを買ったのでありんすから、今宵・・・ひと時の悦楽と夢を・・・お楽しみくんなまし』
「違う!僕はそういうつもりで君を買ったんじゃない!・・・だから、離し・・・」
壮五くん扮する彼に、彼女が少し強引に唇を寄せて黙らせる。
おっと・・・さっきとは違う感じに流れが進んでいくのか?
っていうより、隣から物凄い冷気を感じるのは・・・僕だけ?
「っ・・・なにを、するつもりなんだ!」
『わっちは主さまに買われた、ただの女郎でありんす・・・わっちはこの世界でしか、もう生きていけありんせん人間・・・主さまの生きる綺麗な世では、息も出来ない・・・人間でありんす。さぁ、主さまのお好きなように・・・抱いてくんなまし』
「やめろ・・・やめるんだ!」
眉ひとつ動かすことなく、ただただ静かな微笑みを浮かべながら、愛聖が空いている手で自ら帯を解けば、肩からスルリと着物が落ちて細く白い肌が顕になる。
「話に、ならないな・・・君はあの頃と変わってしまった・・・」