第13章 デビュー会見と、そして・・・
❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁
壮五くんが到着して早々に、愛聖さんとの絡みのカットを撮影してはいるけど・・・
ー カット!!!逢坂くん・・・さっきも言った様に、このシーンは君の役にとっても愛聖さんの役にとっても大事なシーンだ。君はなんとかして彼女をこの場から連れ去りたい。でも彼女はそうは思ってない。そういう気持ちの拗れからの、別れのシーンなんだよ ー
壮「はい・・・申し訳ありません、監督。もう一度、宜しく御願いします!」
壮五くんは、どうも動きがぎこちなくなってしまっていて、これがもう何テイク目かと思うほど同じシーンを撮り直している。
まぁ、同じ寮で生活を共にしている相手と絡むなんて色々と思うところがあるのかも知れないから、それも仕方がないと言ったら、八乙女辺りは眉間に深〜いシワを寄せて、生温い事を言うんじゃない!なんて怒りだしそうだけど。
「随分と撮影が押しているようだな。小鳥遊、お前はどういう教育をしてるんだ」
斜め後ろからの言葉に振り返れば、今まさに想像していた深いシワを寄せた八乙女が立っていた。
「珍しいんじゃない?八乙女がわざわざこういった場所に出向いてくるなんて・・・槍でも降り出すのかな?」
わざとおどけて見せながら言えば、また八乙女のシワがより一層・・・深く刻まれる。
怖い怖い・・・これ以上からかうのはやめておこうかな?
八「姉鷺が天と龍之介に着いて行かなければならない時間になっても撮影が押していると連絡が来たからな。ウチは人が足りないほど忙しい。故に、私が来たまでだ」
「社長が自ら現場に来るとか」
八「お前は人の事が言えるのか?」
「ですよねぇ・・・僕はまぁ、愛聖さんのマネージメントも仕事の内だからね。事務所には有能事務員がいるから、そっちは彼に任せておけば心配いらないからね」
なんて言いながらも、今頃は万理くんが物凄いパソコンスキルで仕事を捌いてくれてるだろうな、と肩を竦めてみる。
八「だいたい、どうしたらあれ程の遅れになるんだ。たかがワンシーンだろう」
「そうイライラしないで見ててご覧よ?あ、愛聖さんが監督に何かを相談してるみたいだね」
NG連発のせいもあって更に動きが固くなってしまった壮五くんにひと声かけて、愛聖さんが監督の元へと移動している。