第13章 デビュー会見と、そして・・・
「よく、似合ってるよ。キミは本当に可憐なお嬢さんだ」
『可憐な、だんて・・・そんな・・・』
言われ慣れない言葉を掛けられ、ジワジワと顔が熱くなる。
楽「照れてんじゃねぇよ、お世辞だろ」
『ちょっと楽!千葉さんに失礼だよ!・・・すみません、千葉さん。楽なんて、どうぞ遠慮なく、お覚悟!切り捨て御免!ってぶった斬っちゃって下さい』
楽「お前なぁ、そっちの方が失礼なんじゃねぇのか?」
ぶっきらぼうに言い捨てる楽に言えば、千葉さんは楽しそうに笑いだした。
「どうやら僕は、これ以上ここにいたら馬に蹴られてしまいそうだ」
『馬に?でもここでの撮影は馬は入らないんじゃありませんでしたっけ?』
今日の撮りは、そういう感じのはなかったような?と付け加えていえば、そんな私を見て笑いながら、千葉さんが楽の肩をポンっとひとつ叩く。
「どうやらキミは、なかなかの苦労人のようだね」
楽「ハハッ・・・どうなんですかね」
イマイチ会話が分からないと口を尖らせていると、スタッフさんが千葉さんを呼びに来て、他のシーンの撮影をする為に千葉さんは行ってしまった。
『ね、さっきのってどういう意味?楽が苦労人とか、なんとか』
楽「・・・お前には、分かんなくていい」
『なにそれズルい!』
楽「うっせぇな、ほっとけよ・・・ったく」
楽がこう切返す時は、だいたいの高確率でその話は打ち切りになってしまうから、それを分かってる私もそれ以上追及するのをやめた。
『それよりもさ?今更だけど、どうして楽がこの作品に参加してるの?顔合わせの時は、楽の役の人は別の演者さんだったのに』
撮影が始まった時に急に楽に代わっててビックリだったんだよ?と言えば、楽は楽で急に話が来て自分も戸惑ったんだと教えてくれる。
『でも、楽も似合ってるかもよ?大きな呉服商の跡取りで、カッコよく気流してる・・・道楽息子』
楽「お前・・・小馬鹿にしてんだろ」
『全然!きっと前世もそのまんまの楽だったんじゃない?』
さっきのお返しとばかりに言えば、楽はあからさまにため息を吐いて、いっそそうなら金積んで手に入れるってのによ・・・と呟く。
『えっと・・・?なんの話?』
楽「うるせぇな。独り言だ・・・ここにいつまでも立ってたってしょうがねぇから、次の出番まで楽屋に戻るぞ」