第13章 デビュー会見と、そして・・・
千葉さんはそう言ってまた笑うけど、今ので私の脳裏に・・・
帯を解かれながらクルクルと回る自分と。
はっはっはっ・・・良いではないか・・・と楽しそうに続ける千葉さんとの、まるでコントのような図が一瞬浮かんじゃったよ。
「それじゃ、僕は支度をしなきゃならないから行くよ。また後でね、可憐なお嬢さん」
これ以上は下がらないだろうといく位に目尻を下げて笑みを浮かべて、撮影期間中はよろしくね?とまた笑う。
あれ・・・なんだろう?
今の、この感じ・・・誰かに似てるような・・・とも、誰だろう?
この笑った時の目の感じ・・・私、どこかで見たことがあるような気がする・・・
でも、どれだけ記憶の糸を辿っても、それが誰なのか分からないまま、誰に似てるのかも思い出せないまま、ひらひらと手を振って出て行く後ろ姿に頭を下げ続ける。
社長がドアの外まで送り出して、またそこで社長が深々と頭を下げて部屋に戻って来た。
『初めてお会いしたんですけど、なんだか気さくな方でしたね、千葉さんって』
小「僕は何度か顔を合わせるくらいはあったけど、見た目とは違ってとても優しい人だよ」
人は見かけによらず・・・か。
なんかそういうのを聞くと、どうしても八乙女社長が浮かんでしまうけど。
『そうですね・・・それに、可憐なお嬢さん、だなんて、言われることがないからムズムズします』
思い出せば思い出すほど、なんとなく気恥ずかしくてじわじわと照れが出てしまう。
小「僕も愛聖さんのことはそう思ってるけど?」
『それ以上言われると照れ過ぎて頭の先から溶けだしちゃいますから・・・やめてください社長』
ひとしきり笑いあった後、そろそろスタンバイをお願いしますと声を掛けに来たスタッフと一緒に楽屋を出る。
歩き出せば、予想外に重みのある簪などの装飾品に、意識をしっかりしてないと首を持って行かれそうで背筋をピンと伸ばす。
時代物の出演って、結構体力勝負なのかも?
小「足元に気をつけてね」
隣を同じ歩幅で歩いてくれる社長に付き添われて、気慣れない着物姿を気崩してしまわないように、ゆっくりと、その通路を進んだ。