第12章 小さな亀裂
環「そう言えば、マリーも同じこと言ってたよな?」
『え?私、ですか?』
七瀬さんと一織さんのやり取りを聞いて、四葉さんがう~ん・・・と何かを思い出そうとする。
「えっと・・・あ、いおりんがマリーのほっぺにキス、したとき」
千「・・・はっ?!」
一「えっ?!」
・・・えぇっ?!
確かにそんな事はあったけど!
それ、いま思い出しちゃダメなやつだからね!!
千「コホン・・・環くん、それはどんな経緯でそうなったのかな?」
『よ、四葉さん?!あれはいろいろな事情があってだから、説明しなくて大丈夫だからね?!』
千「へぇ・・・いろいろな、事情・・・ねぇ。愛聖の事は気にしなくていいから、話して?」
環「あん時は確か、俺といおりんが学校から帰ったらマリーが寮の玄関の中で・・・」
千に促されて四葉さんがあの時の事をこと詳しく話し出す。
その間も、なにかと止めに入ろうとする私を千が遮り・・・を繰り返して、そして・・・
環「んで、いおりんの部屋からマリーの叫び声が聞こえて、みっくんとかとみんなでどうした?!って聞いたら、いおりんにほっぺにチューされたって」
ナ「その時にマリー、顔洗えない・・・と赤くなってマシタ。とても可愛かったデース!」
盛り上がりながら話す四葉さんとナギさんの脇で、私と一織さんは赤くなったり青くなったりを繰り返す。
『なんか、居た堪れない気がするのは私だけでしょうか』
一「奇遇ですね・・・私もですよ」
俯いたままポツリと言えば、それに反応した一織さんも小さく呟いて、私の手をそっと掴む。
『一織さん?』
一「盛り上がってる今がチャンスです。ほとぼりが冷めるまで・・・逃げましょう」
手荷物もそのままに、一織さんがこっそりとドアを開けて私の体を押し出し、自分も出てからまた静かにドアを閉める。
陸「あれ?いつの間にか一織も愛聖さんもいない?!」
ドアの向こうから聞こえて来る七瀬さんの声に2人で肩をすくませながら小さく笑って、そのまま静かに受付横の待合場所まで駆け出した。