第12章 小さな亀裂
❁❁❁ 千side ❁❁❁
ふぅ・・・そろそろ少し、ひと息つこうか。
特に急ぎの仕事っていう訳でもなかったけど、頭に浮かんだフレーズを早く組み立てたくて、モモにも今日は来るなって突き放してしまったし。
仕事部屋から出れば普段は見えるテレビの前の後ろ姿がないことに、少しだけ・・・なんだか静かすぎる、なんて思ってしまう。
モモは、怒ってるだろうか。
それとも、拗ねてる?
プクッと頬を膨らませるモモを想像して、クスリと小さく笑ってしまう。
集中の妨げになるからとテーブルに放り出したままのスマホが、チカチカと小さなランプを点滅させているのに気付いて画面に触れてみる。
ラビチャのメッセージが・・・こんなに?
モモからにしては多いし、いったい他には誰からだ?
そう思いながら開いてみれば、予想を裏切るかのように全てモモからで。
もしかして小言のオンパレードか?なんて苦笑しながらメッセージを開けば、送られて来ていたのは写真ばかりで、そこにはよく知った姿も写っていた。
「愛聖といるのか?それからこっちは、アイドリッシュセブンのメンバー・・・どういう集まりなんだ?」
それに背景をよく見れば、この感じは・・・前に行ったことのある店のような?
どんな経緯でこのメンバーといるのか分からないけど、モモやみんなの表情からして楽しんでいるという事だけは写真からも伝わって来る。
電話、してみようか?
それともこのまま、そっとしておくのがいいのか?
少し迷いながらも、モモのアドレスを辿って電話をかけてみる。
・・・も、出ない。
僕の事を怒ってて出ないのか?
それとも、出られない状態になってるとか?
ビールが入ったグラスを掲げてる大和くんが写ってるのを見れば、モモが飲んでないハズがない。
そうなると後は・・・愛聖くらいしかこのメンバーで連絡が取れる人間はいないな。
すかさず愛聖のアドレスを出して、電話をかける。
コール音が、1回・・・2回・・・3回・・・4回・・・愛聖まで電話に出ない?
諦めて切ろうとした、その時、愛聖の声が聞こえる。
ー もしもし? ー
「愛聖、僕だけど」
ー 分かってるけど、どうしたの?お仕事してるんじゃないの? ー