第3章 新しい環境
私、いったい何してるんだろ。
思い切り閉めてしまったドアに寄りかかり、込み上げてくる笑いを必死にガマンする。
万「お~い?愛聖さ~ん?」
ちょっと小声で私に呼びかける万理が、必死に堪えていた笑いを解き放った。
笑い過ぎて溢れてくる涙を指で払いながらドアを開け、そこに佇む人影にわざとらしく絡み抱きついた。
『ごめんね万理、ちょっといろいろあって慌てちゃった。詳しくは帰ってから話すか、』
···あれ?
万理って···こんな感じだったっけ?
よく見れば、服の感じも違う···ような?
陸「あの、愛聖さん···すみません、オレ···七瀬、です···」
·········。
言葉が、出ない。
その代わりに、体が自然と後ろに向かって進み···全身が部屋に入ったと同時に無言でドアノブに手が伸びた。
大「おいおい、そうはさせねぇぞ?」
ドアを捕まれ、閉まりかけたものが強引に開けられていく。
私が一歩下がれば、二階堂さんが一歩進んで入って来る。
そんな事を繰り返して、私の背中はやがて壁へと着いてしまった。
『あの、ですね二階堂さん?』
腕を組み、私の正面に立つ二階堂さんを見上げる。
『ちょっと、距離···近くないかな?と、思うんですけど』
二「そ?これでもまだ、距離あると思うけど···例えば、こう···とか?」
二階堂さんが瞬きをひとつしてから、壁に手を着いて···更に距離を詰めてくる。
これは、もし···からかわれてるのだとしたら変に慌てない方がいいのかも知れない。
さっき、とんでもない姿を晒しちゃってるし。
それなら、どうやって回避しよう?
お互い無言のままで見つめ合う中で、ふと···思いつく。
いま私に出来る最大の···とはいっても、大した技量もないちっぽけなモノだけど。
それでこの場を収めてみよう···かな?
ブレない視線をわざとずらし、小さく息を吐く。
『二階堂さんが···こんなに情熱的だとは、思いませんでした···』
小さく呟いて、壁につかれた腕から逃れる···フリをする。
大「逃がさないよ、悪いけど」
『逃げませんって。だから、ちょっとだけ···』
寄せた体に腕をそっと回し、その胸に顔を埋めてみせた。
大「実は、さ。初めて会った時から···その肌に触れてみたかったんだ」