第12章 小さな亀裂
『びっくりした・・・もう、ケガとかしてない?っていうか、百ちゃん重い・・・』
小さくため息を吐きながら、抱きとめたつもりの百ちゃんの体を押し返そうと腕を伸ばす。
百「ごめんごめん、オレもびっくりした!でもさ・・・そのお陰で、捕まえちゃった・・・」
伸ばした手をそのまま掴まれて、指を絡めて縫い止められる。
『またそうやって冗談ばっかり言って』
百「冗談なんかじゃないよ。ね、マリー?このまま、あ~んな事を通り越して、こ~んな事に進んじゃっても、いいよね?」
『ちょ、っと百ちゃん!』
あと少し。
あと数センチ。
ゆっくりと距離を縮めてくる百ちゃんを何とか押し返そうとしても、縫い止められた手はどうにも解けず。
百「ご飯より先に、デザート貰っちゃおっかなぁ」
『だから、ちょっと・・・待っ』
吐息がかかる距離まで近付いてきた百ちゃんから顔を背けた、その時。
環「ヤマさん、ここじゃね?」
大「おー、ホントだ。じゃ、入りますかね・・・お邪魔し・・・」
ガラリと開けられた扉の向こうには、軽く息を切らせたみんなの姿が見えて。
誰より先に部屋の・・・というより、私と百ちゃんの現状を確認した二階堂さんが瞬きを繰り返した。
大「あちゃー、ひと足遅かったってヤツ?ま、ごゆっくり」
ごゆっくり・・・って!
『ち、違う!二階堂さん違いますから!これには訳が!百ちゃんも早く退いて!!』
百「えぇ・・・あとちょっとだったのに残念残念」
よっこいしょ、と笑いながら体を起こしながら、百ちゃんはみんなに中へ入るように手招きをする。
ナ「マリー!・・・据え膳食われてマシタか?!」
なぜかキラキラとした目で私を見るナギさんに、まだセーフですから!と慌てて返す。
一「六弥さん。この現状から見れば、据え膳はまだ食われていないかと。あと少し私たちが遅かったら、据え膳どころか完食おかわり、と言ったところでしょうけど」
一織さん・・・おかしな現場検証で予測するのはやめてください。
環「ん・・・マリー、起きれる?」
『四葉さん・・・ありがとうございます』
寝転がったままの私に四葉さんが手を差し出してくれて、それに掴まり私も体を起こした。
三「愛聖、さっきの事だけどな」
『三月さん。いまはその話は・・・』