第12章 小さな亀裂
百「そんな顔すんなって。でも、いまの会話の感じだと、仲直り···出来たんだろ?」
『うん、まぁ···』
百「だったら、こっから先はオレに任せて?」
『百ちゃんに任せるって、どういう?』
百「もっちろん!ナ・イ・シ・ョ!···さて、と」
ものすっごいご機嫌な百ちゃんに圧倒されつつ、その様子を見守ってしまう。
百「おーい、そっち側にいるみんな聞こえるか?」
壮 ー あ、は、はい!···ホントだ···本物の百さんの声だ··· ー
環 ー ももりん!マリーは?!まだ泣いてんのか?! ー
次々と聞こえてくるみんなの声に、百ちゃんはホントに楽しそうで。
百「よーっし!いいか、よく聞け?今からオレがマリーを拉致監禁する!無事にマリーを返して欲しかったら、お腹空かせて全員揃って迎えに来ーい!場所はだな···」
···はぃ?
私を?
拉致監禁???
なんの為に···っていうか、なにそれ?!
百「ちなみに、早く来ないとマリーがどうなるか責任持てないからね~!あ~んな事や、こ~んな事とか···しちゃうかも?じゃあな~!···っと、これでよし!」
『も、百ちゃん?!あ~んな事や、こ~んな事ってなに?!っていうかその前に、私を拉致監禁って?!』
スマホを受け取りながら百ちゃんに聞いても、ニコニコするばかりで教えてはくれない。
百「あー、腹減った。ってコトで···マリー、ちょっと耳貸して?」
『耳?なんのナイショ話?』
ここには私たち2人しかいないっていうのに、チョイチョイって小さく手招きをする百ちゃんにそっと耳を向けてみる。
百「それではこれから、オレ、容疑者···春原百瀬は佐伯 愛聖を誘拐して拉致監禁を決行しまーす!」
『誘拐して拉致監禁って···わっ!』
楽しそうに笑いながら小声で話す百ちゃんを見上げれば、にゃはは!っといつもの百ちゃんらしく笑いながら私の手を引いて駆け出した。
百「まずは逃亡手段として···タクシー!」
駆け出してすぐに映画を見る前のように車を止めて、私を押し込むかのように百ちゃんも乗り込み車を走らせた。
百「オレはいまマリーを誘拐中だから、逃げられないように捕まえとこっと!容疑者の特権!」
そう言って百ちゃんは、隣に座る私に腕を絡ませた。