第12章 小さな亀裂
三 ー あ···愛聖か? ー
『はい・・・あの・・・』
なんて言えばいいんだろう。
ただ普通に会話する事が苦しくて、つい、言葉が詰まる。
三 ー あの、さ。さっきの事だけど、その・・・ごめんな。オレだけじゃなくて、みんなもそう思ってる。環だって、反省してる ー
『三月さん···』
三 ー ちゃんとお前の顔見て謝りたいから、だから愛聖が嫌じゃなかったら··· ー
飯、みんなで一緒に食おう
三月さんのそのひと言で、鼻の奥がツンと痛くなって···急激に視界が滲んで行く。
『信じて、くれたんですね···?』
三 ー あぁ···ホント、ごめん ー
電話越しの三月さんの声が、いつもの元気いっぱいのトーンとはまるで違う事が私の視界を更に滲ませる。
百「マリー、ちょっとオレに代わって?」
トンっと軽く私の肩に手を置いた百ちゃんが、そのままスマホをスっと奪う。
『え、あ、百ちゃん?』
百「いいからいいから、オレに任せて?」
そう言ってニカッと笑いながら、百ちゃんがスマホのスピーカーをオンにする。
百「あー、こちら絶対王者スーパーアイドルRe:valeの百ちゃんで~す!応答どうぞ?」
三 ー はっ?!え···えぇっ?!Re:valeの?! ー
まぁ、普通にそういう反応になるよね···
百「オレの大事なマリーを泣かせる不届き者は、どこの誰かなぁ~?」
三 ー えっ···愛聖、泣いてんのか?じゃなくて、泣いてるんですか? ー
陸 ー 三月、愛聖さんが泣いてるってどういうこと?! ー
ナ ー ワタシのマリーを泣かせるとは···ミツキ、許し難い罪ですネ···ー
三 ー いや、オレだっていまRe:valeと···あぁもう!おまえらうるさい!いまスピーカーにしてやるから! ー
私のスマホから聞こえるみんなの騒ぎ声に、百ちゃんが楽しそうに目を細めながら私を見る。
百「マリー。詳しいことは分かんないし、マリーが話せないって言うならムリに聞いたりもしない。でもさ、簡単に言ったらあのメンバーとケンカでもしたんだろ?」
『ケンカっていう訳じゃないけど···ちょっと、いろいろあって···』
まさか百ちゃんに、今回の事は詳しく話す訳にも行かずに目を伏せる。