第12章 小さな亀裂
万「それはね、愛聖の・・・気持ち、かな」
陸「それって、どういう?」
万「みんなのアイドリッシュセブンとしての活動に、自分も応援したいっていう、気持ちかな。社長は愛聖に、現場経験がある愛聖にしか教えてあげられない事があるからって言われてて。だから、デビューするまでの期間にたくさんの事を経験して貰いたいからって」
壮「言わば、支援···のようなものなのかな」
万「簡単に言えばそうなるかもね。でも、少し違うのは・・・」
その後も万理さんはオレたちにいろんな事を話してくれた。
そこには愛聖本人からは垣間見ることが出来ない苦労や、辛さや、それから芸能界で愛聖が活動している女優って内容がどんなに大変な世界だとか。
ひとつの役を取り合って、勝ち取れば恨まれ、妬まれて。
それはホントに、オレたちが知らない世界で。
そんなシビアな世界で、愛聖はずっと戦って来たんだ···と、思い知らされた。
陸「そんなに大変な世界だったなんて・・・女優さんって、もっと凄い煌びやかな世界なのかと思ってた」
陸の言葉に、誰もが頷く。
万「普段の愛聖からは、全然そんなの分からないだろ?」
「確かに・・・だってオレらといる時の愛聖は、ちょっと天然で、ちょっとドジで、料理は全然ダメで」
一「高い所は怖いのに、その先を考えずに自分でなんとかしようとしたり」
大「化粧っ気のない日常で、ソファーで丸まって寝てたり、な」
ナ「YES!お腹丸見えの時ありマシタ!」
壮「そうだね。その時は僕がタオルケットを掛けてあげたんだけど」
環「でも、そーちゃんそん時、顔真っ赤にしながらだったけど」
その場面を想像して、みんなで笑ってしまう。
万「お腹丸出しで寝てるとか、子供の頃と変わってないよ。ね、気付いた?それってさ、愛聖が他所では見せてない姿ってこと。それだけアイツは、みんなといる時リラックスしてるって事なんだよ」
そう・・・だよな。
なのに、オレたちは・・・
万「居場所が気になるなら連絡してみなよ?多分大丈夫だと思うけど、酔い潰れてたら1人じゃ帰れないだろうから」
楽しいそうに小さく笑いながら万理さんがドアから出て行く。
それを見ながら、オレはポケットからスマホを取り出した。