第12章 小さな亀裂
万「愛聖はみんなの愛されキャラだね」
普段通りのオレとナギのやり取りを聞きながら万理さんが笑う。
一「愛されキャラというか、あの人は何をやらかすか気が気じゃないと言うか・・・そういうところがカワ・・・ほっとけないだけです」
万「それ俺も凄い分かるよ。ちょっと目を離すと、いつだってびっくりするような事になってたりとかね?そしてこの痕跡は、その延長って感じかな?」
意味深なことを言いながらオレたちをゆっくりと見回す万理さんに、チクリと胸が痛む。
大「痕跡って言うあたり、ナギが言ってるのも遠からずってヤツか」
万「まぁ、ネタばらしを言えば俺もびっくりするほどの大泣きをしたから、かな」
大泣き・・・それってやっぱり、さっきのオレたちのせいだ。
環「マリーが泣いてた···って、それって俺のせいだ・・・」
万「どうして?」
環「俺が、マリーを信じなかったから」
陸「環だけじゃないよ!オレだって・・・あんな事を」
壮「環くんや陸くんだけでも・・・ないよ。僕だって、もっとちゃんと止めに入ってたら・・・」
特に何も言わず、オレたちの言葉を聞いていた万理さんが小さく息を吐くのが分かった。
万「みんなはもう、ちゃんと分かってるじゃないか。俺は泣きじゃくる愛聖から話をチラッと聞いただけだったけど、それでも俺は愛聖を信じてるよ。もちろん俺だけじゃない。それに、社長からも聞いたんじゃない?愛聖の秘密ってやつ」
「聞いたよ。まさかオレたちのために、今までの仕事のギャラを注ぎ込んでたとか。愛聖、オレたちにはなにも言わなかったのに」
万「愛聖はここではみんなの後輩で、なのに事情が変わってみんなより先に再デビューする事になった。みんながどれだけ早くデビューしたいかを知ってるのに、自分が先に再デビューする事を悩んでた時もあったよ。その結果が、そういう事なんだろうけど」
万理さんは、自分がそれを知ったのは社長に相談されたからだと言いながらも、穏やかな表情のまま話を続けた。
万「社長はこの事務所を、小さくて貧乏だとか言うけどそれも違う。ちゃんとした芸能プロダクションだ。だからアイドリッシュセブンがどんな活動をしようとも、それに関わる費用なんて全然余裕があるよ」
一「ではなぜ・・・?」