第12章 小さな亀裂
❁❁❁ 三月side ❁❁❁
社長との話し合いが終わって、元いた部屋にみんなで戻る。
けど、社長室へ行く前と今とじゃ気持ちの重さが全然違って···みんなそれぞれがなにかを考え込むように口を閉ざしていた。
陸「オレ···なんにも知らなくて。なのに、愛聖さんを疑うような事を···」
環「りっくんだけじゃねぇし。俺だってマリーにいろいろ言ったし」
壮「僕は愛聖さんをそんな風には思ってはなかったけど、社長の話を聞いて···もっと僕に出来ることはなかったのか?って、思ってるよ」
陸や環や壮五の話を聞きながら、オレだってあの時、環や陸の言うことを鵜呑みにしそうだった自分を責める。
暴れだしそうな環を押さえながらも、まさかな?とか思ってたんだから同罪だろ。
それに今更だけど社長の話を聞いて、愛聖が普段からしてたのは節約なんじゃねぇのか?って、思い当たる節が幾つもあって。
一緒に買い物行った時、オレよりも先に見比べて調べたチラシの内容をメモってたり。
散歩してたら安かったからとか言って、随分遠くの店の袋を下げて帰って来たり。
オレたち以上に、いろいろ考えて応援してくれてたんだな···愛聖。
大「リク、それからタマ。あの時にどう思っていて何を言ったかなんて、今更どうにもならない。社長の話を聞いたからって訳じゃないけど、今オレたちがすべき事は···ひとつじゃないのか?」
陸「でも···なんて謝れば許してくれるか···」
陸の言葉に、誰もが黙り込む。
そうだよな···あれだけ傷つくような事を言って責めちまったんだから。
一「なによりも素直に、心を込めて謝ればいいのでは?許してくれるか否かは、その後です」
「そうは言ってもだな、一織。そもそも、」
一織の発言に言葉を返そうとした瞬間、ドアがノックされ万理さんが顔を覗かせる。
万「良かった、三月くんがまだここに居てくれて」
「え?オレ?」
名指しで言われて、オレにどんな用事だ?なんて思いつつも万理さんのいる方へと体を向ける。
万「さっき愛聖から事務所に連絡があってね。三月くんに伝言を頼まれたんだよ」