第12章 小さな亀裂
❁❁❁ 百side ❁❁❁
せっかく夕方からオフだって言うのに、ユキは曲作りに集中したいから部屋に来ちゃダメとか言うし。
別にオレがユキの家にいたって、ユキが仕事してる時は放置プレイなんだからいいじゃん!って思ったけど。
ユキがこれから作る曲が、Re:valeにとってどれだけ大事なのかは分かってるから···今日はガマンするけどさ。
軽く変装してブラブラと街中を歩きながら、目につくのはTRIGGERの新曲MVで。
な~んか、爽やか過ぎるっていうかなんというか。
今までのTRIGGERの曲とは全然違う感じの曲だけど、季節感満載でいい曲だよな。
もっちろん!ユキが作ってくれる曲の方が、オレは何百倍も好きだけどね!
自販機で買った缶コーヒーをグビっと飲み干し、近くにあるゴミ箱へと入れる。
さてと···この後どうすっかなぁ?
ただ街中を歩き回るのも飽きて来たし、そろそろ家に帰って録り溜めしてるサッカーの試合でも見ながらのんびりするか、な···って、あれ?
少し先にある店の前に佇む見知った後ろ姿に、よーく目を凝らす。
うん、間違いない。
後ろ姿もそうだけど、ウインドウガラスに見えてるのは間違いなくマリーじゃん?!
こんな所で出逢っちゃうなんて、百ちゃん···運命感じちゃう!
なんて、言ってる場合じゃないよな。
あんな所で何してるんだろ?
マリーの周りをよく見回しても、いつも一緒の社長さんや、アイドリッシュセブンのマネ子ちゃんも見当たらない。
もしかしてマリーもオフで、買い物してるとか?
だったら、オレが声掛けちゃっても全然オッケーだよな!
目標人物をロックオンしながら、1歩、また1歩と足早に歩み寄る。
手が届く距離まで近付いて、何気なくぽんっと肩を叩いて···それから···
極上のスマイルを掲げて。
「かーのじょ!こんな所でなにしてんの?ひとり?もし良かったらオレとお茶しちゃわない?」