第12章 小さな亀裂
小「一応、言っておくけど。君たちの活動費くらいは小さい事務所ながらもちゃんとあるよ?だけど、何度愛聖さんと話しても、そこは譲っては貰えなかったんだよ。先日のデビュー曲の為の沖縄ロケで泊まったホテルも、選んだのは僕や万理くんではなく、愛聖さんだ。偶然TRIGGERと同じだったみたいだけど、素敵なホテルだったんじゃないかな?」
確かに、デビュー曲のPV撮影をするにしては豪華過ぎるんじゃないか?とは思ったけど。
まさかそんな···裏話があったとか···
小「自分には雨風凌げる場所がある。温かい食事を作ってくれる仲間がいる。自分が出来る範囲の家事を手伝いながら、ちゃんと生活は出来てる。そう言って愛聖さんは、たくさんの辛い経験をした君たちがデビュー出来るんだって喜んで、お祝いの代わりにって、あのホテルを取ってきたんだ。その時点で支払いも済ませてあったよ」
壮「そんな、何から何まで全ての事を愛聖さんが···」
そこまでの話を社長から聞くと、オレには少し思い当たる節もあった。
そこそこ仕事もあるヤツなのに、化粧品やら、なんかそういった物を凄く大事に使ってたよな。
普通···ってのが当てはまるかどうかは分からないけど、女優とかだったら。新色だの、新製品だのを買い込んだりするだろうに。
ミツに頼まれてドラッグストアに愛聖と行った時も、2色のルージュを見て凄い迷ってたし。
きっと、そういうちょっとした事で節約してたんだろうな。
小「僕の話はこれでお終い。さぁ、君たちはそれでも···あの曲を横流ししたのは愛聖さんだと、思うかい?」