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〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第12章 小さな亀裂


硬直する愛聖に微笑みかけて、軽くひらりと手のひらを振りながら応接室を出る。

後ろ手に閉めたドアの向こうからは、愛聖がなにか叫んでいるけど···気にしない気にしない。


事務所へと続く廊下を数メートル進んで、はた、と足を止める。

社長室では今頃、デビュー曲の事について話し合いがされてるだろう。

と、なれば。

彼らから、愛聖に疑いがかけられた事も社長の耳には入るだろう。

もちろん社長だって、愛聖がそんな事をする人間じゃないってことは分かってくれてる。

恐らく、あの空き巣事件の時に持ち出された物が、どういう流通かを通って流れてしまったんだろうと俺は思うけど。

なんにせよ、愛聖への誤解が解けない限りは話は進まないと思う。

ひとりになったら、愛聖はまた···泣くんだろうか。

あれだけ大泣きをするんだから、相当のショックはあっただろうし。

同じ屋根の下で生活の場を共にしているメンバーに、あらぬ疑いをかけられたんだから。

もし、また泣いていたら。

もう1度、大丈夫だよって抱き寄せて···えっと、あれ?

ちょっと待って。

俺ってもしかして、いや、もしかしなくても···愛聖に凄いことしちゃってない?

俺の中では、愛聖はいつでも年下の手の掛かる···子供?的な?感じ?

だけど、はたから見たら俺も愛聖もちゃんとした大人の姿、だよな?

いくら昔から知ってる間柄だとはいえ、抱き寄せて頭ポンポンはいいとして、千のマネとはいえ···

「う、うわわわわわわ···」

今更ながらさっきの行動を思い出し、体温が上がる。

俺···なにしてんだ?

いやいやいや、愛聖は年が離れた子供!

そう、子供だから!!

自分の意思と反して跳ね上がる心拍数に胸を押さえてみる。

これからは少し···愛聖に気を使わないと、だな?

うん、そうしよう···

ひとりで変に納得して、大きく深呼吸をする。

「さて、行きますか」

誰に言うわけでもなく呟いて、やり掛けの仕事をする為に自分のデスクへと向かいだした。

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