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〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第12章 小さな亀裂


『その用事が終わって、楽が寮の前まで送ってくれてて、寮の前で少しだけ話して···その···』

なんだかイマイチ歯切れの悪い感じにいったいそれがどうしたんだ?と頭の中にハテナかいくつも浮かぶ。

『そろそろ寮に入るねって、バイバイして。そしたら楽が私を呼びながら急に腕を引いて抱き寄せるからびっくりして。危ないでしょ!って楽の顔を見上げたら···』

まるでドラマのワンシーンを思い浮かべさせられるような、愛聖の言葉が止まる。

もし、ドラマの展開であったなら···こういう時の流れって···

「キスでもされた?」

つい、安易な考えを口にしてしまう。

けど、そんな俺の言葉に返ってきた反応は。

戸惑いながら俺から目を逸らして、コクリ、とひとつ頷く愛聖だった。

「え、大正解?」

また、愛聖がコクリと頷く。

「えっ、と?···ごめん、2人がそういう仲だとか気付かなくて。あ、社長は?社長は知ってる?」

動揺して、なんだかおかしな言葉を並べる俺に、愛聖が視線を戻す。

『違うの···私と楽はそういうんじゃなくて!その、みんなにも説明はしたんだけど、楽って時々イタズラと言うか、私をきっとからかって楽しんでるっていうか!えっと、ほら!昔の千みたいに!千は今でもそうだけど!』

「千?···あー···千···千ね、千···」

確かに千は昔から、愛聖にちょっかい出しては怒らせたり驚かせたりしてたけど。

千の場合は、きっとTRIGGERの彼とは違って相当の偏屈者で、人見知りで、自分のテリトリーに気に入らないやつが踏み込めば容赦なく攻撃して。

でも、自分が少しでも心を見せる事が出来る相手なら、自分が構って欲しくて構い倒す···感じだけど。

千にとっての愛聖は、間違いなく後者だ。

『それでさっき、私がTRIGGERに曲を流したんじゃないかって疑われた時、七瀬さんにその時のことを見られてたみたいで···そういう中でもないのに普通はそんな事しないだろうって』

ほんとに違うのに···そう言いながらも、また愛聖の瞳からは大粒の涙が零れ出して行く。

そういう話の流れだったのか···だからさっき、みんなの空気がおかしかったんだな。

「泣くなって···ほら、こっち向いて···顔上げて?」






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