• テキストサイズ

〖 IDOLiSH7 〗 なないろパレット

第12章 小さな亀裂


『だから、本当に楽とはそんな関係じゃありません』

環「そんなの、分かんねぇじゃん。不意打ちとか、不意打ちじゃないとか、俺らには分かんねぇし」

静まり返る中で、ぽつりと零す四葉さんの声が響く。

環「だから···俺はマリーが、」

大「タマ!」

環「なんでみんなマリーの味方なんだよ!俺らの曲だったのにTRIGGERが歌ってたんだぞ!」

大「誰も味方になったとは言ってないだろ?タマ、とりあえず今は落ち着け」

味方じゃ、ない···?

二階堂さんの何気ないひと言に、ハッとしてみんなを見回してみる。

そこには、四葉さんのように感情を露わにしている人はいなくても···それぞれが複雑な顔をして、私と目が合えば、その複雑さを更に深くしていた。

みんな···もしかして本当は。

心のどこかで疑念を持っている、とか?

じゃあ、やっぱり私···疑われてるの?

普段は、あんなににこやかに話してくれる四葉さんも、それから七瀬さんも···目を、合わせてはくれない。

『どう、して···』

そんなひと言さえ、喉の奥に重くて硬いなにかが詰まっている感じがして、思うように声にならない。

ナ「マリー。ワタシはマリーを信じます」

『ナギさん···』

ナ「マリーはワタシたちの歌を好きだと言ってくれました。だから、どうか···」

泣かないでクダサイ。

ふわり、空気が動く。

鼻腔を擽る香りは、間違いなくナギさんのもので。

それがどういうことなのかを理解するには、時間はかからなかった。

『ありがとございます、ナギさん。でも、これ以上ここに私がいたら皆さんも話が出来ないと思うので···私は先に、帰りますね』

そっとナギさんの胸を押し返し、今できる精一杯の笑顔を向ける。

無理にでも笑っていないと、私の中でなにかが崩れてしまいそうだったから。

ナ「では、ワタシが送りましょう。ヤマト、OK?」

大「あぁ、そうだな。ひとりで帰らせる訳には行かなないし、ナギ···頼、」

『大丈夫です。まだ明るいし、大丈夫···』

二階堂さんの言葉を切るように言って、ドアノブへと手を掛ける。

『じゃあ、お先に失礼します···』

小さく言って、スルリとドアから出る。

ゆっくりと閉めたはずのドアは、この時ばかりは大きな音を立てた気がした。


/ 1348ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp