第12章 小さな亀裂
❁❁❁ 陸side ❁❁❁
「今日も聞いてくれてありがとう!!」
まだ整いきれない呼吸のままで、それでもオレたちの歌を聞きに、オレたちに会いに来てくれたファンの人たちに大きく手を振った。
同じようにみんなに手を振る大和さんを見れば、大和さんと目が合って、打ち合わせ通りに行こうと大和さんが小さく頷いた。
打ち合わせ通り···それは、今日この場でオレたちのデビュー曲を新曲としてお披露目しようって事で。
どんな時でも、ずっとずっとオレたちを応援し続けてくれていたファンのみんなに、1番に聞いて欲しいっていうメンバーの気持ちを込めて···
「今日は次の曲で最後になります!···新曲です!」
わぁっという歓声に、思わずとびきりの笑顔になる。
それはオレだけじゃなくて。
一織も、大和さんも、三月も、環も、壮五さんも、ナギも···そして、マネージャーや愛聖さんも。
ここにいる全員が、その曲を発表する事がどういう事なのか···分かってるから。
「詳しいことは今は言えないけど、オレたちにとって最高の思い出の曲になりそうです···タイトルは、」
そう、言いかけたとき。
オレたちのステージの前にある大きな駅ビルに備えられたモニターから、聞き覚えのある曲が大音量で流れて来る。
けど、それはオレたちの為なんかじゃなくて。
そこに映し出された映像は、TRIGGERの姿で。
「TRIGGERの新曲だって!」
「なんかいつもと雰囲気違うけど、こういうのもイイよね!」
「爽やかな感じが凄い!」
オレたちを見に来てくれたみんなも、思わず釘付けになるようなTRIGGERたちが、そこにいて。
環「似てる···っていうか」
一「···私たちの、デビュー曲···じゃないですか···」
そうだ···そうだよ···この曲はオレたちの···
「アイドリッシュセブンの新曲は?!」
「早くも聞きたーい!!」
オレたちの···新曲、は···
「えっ···と···」
なんて···言ったらいいんだろう。
壮「どうする?他の曲を···」
大「同じのやるしかねぇだろ···」
なにも言えないオレを見て、壮五さんと大和さんが言葉を交わす。
三「でも!同じのって···」
そうだよ···だってオレたちの新曲は、いま···
大「今日のところはだ!」