第12章 小さな亀裂
自分で言って、そこまで色気も何もなし?!とツッコミ入れたくなるけど···でも。
それが現実だし?
『色気か···ちょっと位は、欲しいなぁ···』
紡「えっ?!」
『あ、ごめんごめん!なんでもないよ』
危ない危ない、心の声が出ちゃった!
微妙な笑顔を向けて、それから···そっと空を見上げてみる。
急な雨に見舞われることが多かったアイドリッシュセブンだけど、今日は青空が広がっていて。
こんな晴々とした天気なんだから···
『きっといい事が起きる』
そんなひと言を、呟いてみた。
大「そんじゃ、行きますか」
いつもと変わらない、二階堂さんらしい掛け声にみんなが大きく頷く。
紡「愛聖さん。私は外に出ますけど、愛聖さんはどうされますか?」
緊急時にみんなにメッセージを伝えるためのスケッチブックを抱えて、紡ちゃんが私を見る。
『私?私は···ここからみんなを応援してるよ。私が外に出て、もしも騒ぎになったりしたらみんなに悪いから』
せっかく主役なみんなが、佐伯 愛聖
がいるぞ!なんてつまらない騒ぎで霞んでしまったらと思うと、私はここで見てる方が正しい選択だと思えるから。
紡「そうですか···」
『大丈夫。ここは出入口はこのドアだけだし、もしもなにかあったら紡ちゃんからもみんなからも見えるから』
紡ちゃんの表情から、わたしがいるひとりになる事を心配してくれているのが分かる。
社長にも万理にも、絶対にみんなから離れちゃだからね?と念を押されてるし。
万理なんて、私の顔を見る度に言うんだから。
心配し過ぎだよ、万理は。
出かける前までの万理の様子を思い出して笑いながら、簡易ステージへと向かうメンバーの姿を見送った。