第11章 スタートライン
『ふぅ···準備運動はこれくらいでいいかな?』
早くも流れ出す汗をタオルで押さえながら三月さんを見る。
三「こんくらいって、お前···準備運動ってより本番っぽかっけどな。見てみろよ、大和さん死にかけてんぞ」
大「愛聖···オレを置いて先に行ってくれ···」
ほら?と三月さんが指させば、二階堂さんがそれに乗っかって胡散臭い芝居をする。
『なに言ってるんですか!そもそもいまの準備運動的なのって、アイドリッシュセブンの曲だったのに。これくらいでへばってどうするんです?』
しょうがないなぁ···なんて言いながら二階堂さんに手を差し出して引っ張り起こして、ここからが本番ですよ?と念を押す。
三「っていうか、なんでみんなここに集まってんだ?」
『あぁ、それは···部屋から出たら四葉さんと逢坂さんに会って』
逢「せっかくだから僕たちも一緒にって言ったんだよ」
環「みっきーとヤマさんだけマリーを独り占めすんの、ヤダったし」
一「その話をしている所に、たまたま私が通りかかって。なら、六弥さんと七瀬さんも誘ってみんなでって話が纏まりました」
三月さんが自分のポジションやフリの遅れをチェックしたいって事だったから、みんなが揃ってた方が分かりやすいかな?って思ったんだよね。
三「でも、そうなるとマリーが見学して、違うところとか遅れ気味の所をチェックする係になるのか?」
陸「オレたちが練習してるのを見てるとか、ちょっと緊張するかも」
一「七瀬さん。佐伯さんがたった1人で見てるだけで緊張するなら、これから先はどうするんですか?」
あはは···また一織さんのお説教が始まっちゃった。
『三月さんは、客観的に自分のポジション移動とかをじっくり見た事ってありますか?』
一織さんの言葉を遮るように言って、持ち込んだ私のノートパソコンを開いて動画再生画面を見せる。
三「それならたまに見るけど、アングルとかカメラワークとかあって、オレだけをじっくり見るのって難しいんだよなぁ」
『ですよね?もし私が三月さんの立場でも、きっとそう思っちゃいます。だけど、ほら···こ・こ・に!アイドリッシュセブンの大ファンでもあり、動画見まくってフリを覚える暇人がいるじゃないですか』
フフっと笑いながら自分を指させば、それを見てみんなが笑顔を見せた。