第11章 スタートライン
❁❁❁ 百side ❁❁❁
「ねぇ、ユキ?さっき小鳥遊社長に預けてたのって、もしかして、アレ?」
帰り際にユキが手渡していたディスクを思い出して、そう言えば···と聞く。
千「そうね···あれは愛聖の詞に合わせてつけた曲が入ってるやつ。本当は愛聖に直接渡したかったけど会えなかったし、だから、うさぎのおじさんに」
うさぎのおじさんって···ユキ、それ本人の前で言っちゃダメなやつだからね?
···確かにおかりんと事務所に行った時、社長さんはモッフモフのうさぎを追いかけてニコニコしてたけどさ。
こら~、きなこ~、イタズラしちゃダメだぞ~?とか言いながら撫でてたし。
あれじゃまるで、飼育員のおじさん···いやいやいや!
それじゃまるで、オレの方が失礼極まりないじゃん!!
ご飯もご馳走になっちゃったのに!
思い出し笑いを堪えて、ゴホン···と咳払いをする。
「マリーはいろんなの書いてたけどさ、全部に曲作ったって事?···あの、なんだかちょっとオトナの歌詞とかも?」
千「もちろん。どれが世に出るのか分からないけど、ちゃんと考えたよ。僕は全部の曲を愛聖が歌ってくれてもいいんだけどね」
全部の曲かぁ···ミニアルバム余裕で出来ちゃう感じだよね。
そしたら特別サービスでオレたちがバックコーラスとかしちゃったりして?!
それでもしライヴやっちゃう!とかになったら、一緒にステージ上がっちゃったりとか?!
ヤバい···それ楽しそう!
あれ?そう言えばついでに···だけど。
「お蕎麦屋さんの女の子、マリーによく似てたよなぁ」
千「あれは正真正銘、愛聖だよ。僕たちにひた隠しにしてたけど、社長さんは知ってたみたいだし···今度、僕が尋問するから」
尋問···ユキのそれって、結構キツイよな。
壁際に寄せられて見つめられたら、もう···洗いざらい白状しちゃう感じで。
そしてそれがオレだったら、見つめられた時点で間違いなく···ノックアウト!
メロメロって意味で、だけど。
千「愛聖が曲を聞いたら連絡のひとつでもあるだろうから」
えっと···なにその怪しげな微笑み。
ユキ···怖いよ?
違う意味でドキドキしながら、ずっと微笑みを浮かべるユキから···目が離せなかった。