第11章 スタートライン
一「前にここに大神さんにそれを見せられた時、その後みんなに混ざって踊りましたよね?でもその時は私たちの最初の曲でしたが···」
『大丈夫!とは言いきれませんけど、みなさんの大切な新しい曲も、何度も練習を見学させて貰っているので代打くらいなら···なんとか?』
Vサインを掲げて笑って見せれば、それはそれでまた、笑顔を見せられる。
逢「ここでしか、それも僕たちほどの練習時間はないはずなのにフリを覚えてるなんて凄い···」
『違いますよ?私は前の事務所の時に、八乙女社長がいろんな教育をして下さっていたんです。舞台なんかの仕事が入ったら、初見でどれだけ吸収出来るかが鍵になったりするので、それでだと思います』
八乙女社長は忙しい中で舞台を見に連れて行ってくれたりしながら、様々な演技の勉強をさせてくれて。
アイドル志望ではなくとも、どんな作品のどんな役柄に役立つか分からないからって、歌やダンスの教育もあって。
それが今、こうして違う環境で役に立ってるとは···八乙女社長も思ってないかもだけど。
三「オレも···ゼロに憧れて、自分でいろいろ練習してたけど、愛聖とは全然違うもんな···」
ポツリ小さく零す三月さんの言葉が空を舞う。
『三月さん。私と三月さんを比べるのは違うと思います。私の場合は、まぁ···簡単に言えば訓練をする学校に通ってたみたいなものですから。でもそれが今、ここで少しのお役に立てているんです。私は三月さんの方が凄いと思いますよ?』
三「オレが?」
伏せ目がちな顔で、三月さんが私を見る。
『三月さんはずっと自分でなんとか頑張ろうって練習して来たんですから。私のは、八乙女社長に言われて、半ば強制的に···と言えば怒られそうだけど』
八乙女社長の、眉間に深ーく刻まれた不機嫌な顔を思い浮かべて苦笑する。
環「なぁ、マリー?そんだけいろいろ勉強させられたならさ、TRIGGERとか、Re:valeのも踊れたりとかすんの?」
傍らで話を聞いていた四葉さんが、ドリンクを飲みながら会話に入って来る。
『どうかなぁ?頑張れば真似事くらいは出来るかもだけど。TRIGGERも千たちも、いろいろ激しいから』
環「マジで?じゃあ今度、そっちのも一緒にやってみようぜ」
キラキラと目を輝かせながら言う四葉さんに、私は小さく笑って返した。