第11章 スタートライン
❁❁❁ 三月side ❁❁❁
ひと通り新曲を聞きながら、自分のパートをチェックして音源を止める。
やっぱり、歌もダンスも、まだまだ練習が必要だよなぁ。
イヤホンを外しながらため息を吐いて、ベッドに転がる。
自分がみんなより小柄でってのは、悔しいけど自覚はある。
だからってワケじゃねぇけど、それもあってみんなとフリがズレちまう所もあんだよなぁ···
大和さんはポジション移動の時に歩幅が違うからズレるんだって教えてくれたから意識して歩幅変えたり歩数増やしたりして調節してるけど···そっちに気を持ってかれると他に影響も出るし。
そう言えば···と、前にレッスン場で見た愛聖の事を思い出す。
万理さんに連れられて覗き見た、オレたちの曲をひとりで歌って踊ってた愛聖の姿。
あの時の愛聖は、オレのポジションとか、ナギとか陸のをひとりでやってたよな?
本人曰く、自分のは映像を見たただの完コピだって言ってたけど、それだってオレからしたらスゲーよ!って思ったんだっけ。
オレも···いやいやいや。
オレが自分の映像を見て完コピってのも変だろ?!
う~ん···と唸りながらベッドの上をゴロゴロとすれば、ドアの向こうから、まさにいま思い浮かべてた相手の声が聞こえてくる。
···帰ってきたのか?
ガバッとベッドから体を起こし廊下に顔を出せば、ちょうどそこを通る愛聖と顔合わせた。
『わっ、びっくりした···あ、三月さん、ただいまです』
「お、おぅ···おかえり」
思いのほか近い距離に動揺しながら、にこりと笑う愛聖を見て···気付く。
この距離···背格好···やっぱりオレと愛聖って近いモンがあるよな?!
だったら···
「あ、あのさ愛聖。帰って来て早々に悪ぃんだけど···ひとつ頼み事を聞いてくれっか?」
『三月さんの頼み事、ですか?いいですけど···あ、お皿洗いのお手伝いですか?』
「違ぇよ!それは壮五と終わってるから···そうじゃなくて、だな···えっと···」
なんて、言えばいいんだ?
オレと踊ってくれないか?···って、ナギか!
じゃなくて!!
「えっと···し、新曲のフリをだな···」
『新曲のフリ、ですか?』
「ちょっと、見て貰いたい···なぁ、とか?」