第11章 スタートライン
離れた場所からでも、何かを話しながら、時には微笑み合うのが分かる。
陸「あ、寮の門まで来た···ヤバいナギ、隠れよう!」
「OK···」
何気なく建物を振り返るマリーから隠れるように、リクと一緒にその場で屈んで、柵の隙間から様子を覗き見る。
「なんだか刑事ドラマのようでドキドキしますネ···」
陸「でもナギは張り込みには向かないって。だって目立つもん」
「隠し切れないワタシの魅力が溢れてしまうからデスカ?」
陸「あー···ハハッ、そうかも」
リク···なぜそこで棒読みデスカ?
陸「なんか話してる···早く寮に入っちゃえばいいのに」
門の前では、まだ仲睦まじく話をする2人の姿。
これは···なかなか、ハラハラしますネ。
おっと···マリーが彼に手を振って背中を向けました。
これでハラハラも落ち着···Nooooooo?!
陸「···!!」
一瞬の出来事に思わずリクを見れば、リクもそれを見て体を硬直させています。
陸「ナギ···見た···?」
「YES···」
背中を向けて1歩進み出したマリーを引き寄せ抱きしめる、彼。
驚いて顔を上げたマリーの頬に手を当てて···そのまま彼はキスを落とした。
陸「どうしようナギ···オレ、見ちゃいけないものを見ちゃった気がする」
「なぜデスカ?別れ際のキスくらい、ワタシの国では挨拶と同じデスよ?」
なのに。
なぜこんなにもワタシの胸が···チクリとするのでしょうか···
陸「ナギの国ではそうかも知れないけど、ここは日本で···その、そういう事するのって、さ···挨拶とは、違うんだよ···」
みるみる内に顔を赤くしながら言うリクに、体が冷える前に中へ戻りましょうと背中を押して、そっとリビングへと戻る。
誰にも言えない秘密···それは、ワタシにもありますが···
でも、いまのは。
出来るなら目の当たりにはしたくはなかった、と。
そう···ワタシの心が小さな声を上げていた。