第11章 スタートライン
❁❁❁ ナギside ❁❁❁
シャワーの後、濡れた髪にタオルを当てながら、まだ火照りが続く体を涼ませようとバルコニーへと出る。
ここから見える場所に、まだワタシの大事なマリーの姿は···見えませんネ。
「oh...いつになったら、マリーは帰って来るんでしょう」
新しい曲のコト、マリーとお話したいというのに。
あの曲を、マリーは元気な曲でスキだと言っていた。
ハルキ···ワタシの他にも、アナタの曲がスキだという人が、ここにもいますよ。
「そんな格好で外にいたら、風邪ひくよ?」
隣に立つ人影に視線を移せば、そこにはワタシよりも風邪をひいたら大変な人間がいて。
「リク?ひんやりとした空気は、リクにはよくないのでは?」
陸「これくらいなら大丈夫だって。前よりもずっと、丈夫になって来てるんだし。それよりナギは、ここでなにしてんの?」
「ワタシですか?ワタシはここで、マリーが帰るのを待って···ん?リク、向こうから誰か···歩いて来ます」
陸「え、どこどこ?···あ、ホントだ。愛聖さんかな?」
リクと話しながら、少し離れた通りの向こうに人影が現れたのを目視する。
「こんな時間に女性がひとり歩きはキケンですね···リク、ワタシはちょっと迎えに行って来ます」
凭れていた体を起こし、クルリと部屋の方へと体を向ければ、リクがワタシの腕を取って引き止める。
「リク?どうしました?」
陸「待ってナギ。歩いて来る人影、ふたつあるけど」
ふたつの人影···デスカ?
元いた場所へと戻り、柵に体を押し付けてリクが目を離さずにいる方向へと自分も顔を向ける。
「ひとつは間違いなく、ワタシのマリーデスね···では、あともうひとつは···」
マリーと肩を並べて歩く、スラリとスタイルのいい影。
陸「え、ウソ···ナギよく見て!愛聖さんの隣を歩いてるの···オレの見間違いじゃなければ、TRIGGERの八乙女楽···じゃない?」
TRIGGERの···?
リクがそう言っている間に、ふたつの影が街灯の下を通る。
「なぜ···その八乙女楽が、マリーをエスコートしているのでしょう?」
陸「オレに聞かれても分かんないよ。だけど、どうして愛聖さんが八乙女楽と一緒に···」