第11章 スタートライン
❁❁❁ 大和side ❁❁❁
環「なぁ、バンちゃん。今度、俺たちって広場で歌とかやるじゃん?」
夕飯の後片付けを万理さんが名乗り出て一緒にキッチンにいる時、テーブルに突っ伏していたタマが、万理さんにそう声をかける。
万「そうだね。今までと同じように、少しずつ活動を広げて行って···って、社長は言ってたけど。なにか心配事でもあるの?」
環「心配事っていうかさぁ。その日って、マリーは仕事とかあんのかな?って」
ハハッ···そういう事か。
万「愛聖のスケジュールは、主に社長が同行してるから社長管理だけど···でも、確かその日は社長は事務所にいる予定だから、愛聖はオフなんじゃない?」
「タマはホンットに、愛聖が好きなんだなぁ」
洗い終わった食器を片付けながら言えば、タマは当然!と勢いよく体を起き上がらせた。
環「だってマリー、俺らが練習たくさん出来るようにって分担してる仕事やってくれたり、あとは宿題教えてくれたり、お菓子くれたり、王様プリン買ってくれたりすんじゃん」
なんか最後の方はほとんど違う理由になってる気もするけど、まぁ、そこは素直なタマのいいところなんだろってことで。
「タマは愛聖に見に来て欲しいって言いたいんだろ?」
環「ゥス。愛聖がこの前、俺らの新しい曲を聞いた時に元気いっぱいな感じが好きだって言ってた。だから、みんなで元気よく歌ったらマリーも元気になるかもって···マリー、あんな事があって元気ない時あったし。なんか、バンちゃんっていいよな···ちょっとだけ、羨ましいっつうかさ」
万「俺?なんで?」
環「···別に」
タマはそれっきり口を閉ざして、なにかを言おうとするも、やっぱり黙ってしまう。
全く···しょうがないな、タマは。
「万理さん。タマが言いたいこと、オレには分かるよ。例の件を社長から聞いたあと、ほんの少しの間だけど、愛聖はオレらが体に触れる度にビクビクしてたんだ」
万「体に、って?」
「例えばこんな風に」
言いながら万理さんの肩を叩いてみたり、呼び止める位の感じで腕を掴んでみる。
万「あー···なるほど」
「本人はあんまり気付いてないのかも知れないけど、一瞬···体が強ばってた。で、タマが言いたいのは···」