第3章 新しい環境
いつかきっと、読み返したくなる時が来るはずだから。
何時でも読める様に、ずっと大事にしまっておきたい。
そう考えながら、静かにクローゼットの扉を閉めた。
残るはあと、ひとつか。
何気なくカッターを当てると、送り状には八乙女社長の名前ではなく、姉鷺さんが送り主の箱になっていた。
姉鷺さんから私に、個人的に?
とりあえず箱を開けてみない事には分からないからと、開封してみる。
ちょっと、これって···なに?!
蓋を開けて早々に目に入るのは、どう見ても···ランジェリー···ですよね?
それも色とりどりで、は···派手極まりない色やデザインばかりが所狭しと押し込まれている。
···あ、姉鷺さんは、私にこれをどうしろと?!
一瞬にして理解不能に陥った私は、ポケットからスマホを出して直接電話を掛けた。
姉ー は~い、お待たせしました、アナタの姉鷺で~す ー
語尾にハートマークでも飛び交っていそうな受け声に毒気を抜かれてしまう。
『あ、の···姉鷺さん?』
姉 ー はぁい? ー
『私宛てに姉鷺さんから荷物が届いたんですけど、ね』
チラリと箱に目をやりながら、これはいったい···と続けた。
姉 ー あら!ちゃんと届いて良かったわ?で、どう?気に入ったかしら? ー
いや···気に入るもなにも。
『驚きの方が先でした』
姉 ー あら、どうして?可愛いのから素敵なのまで、選り取りよ? ー
『いろいろ聞きたい事があり過ぎて、いま···ちょっと混乱してますけど。私には派手···かな?と』
姉 ー や~だぁ~!そんな事ないわよ~?愛聖はお年頃の割には地味~なヤツばっっっっかりだったから、社長と買い付けに行った時に一緒に纏めて買ったんだから~ ー
『八乙女社長とですか?!』
あの社長が···ラ···ランジェリーショップにまで?!
姉 ー おバカ。あの社長がそんな物売ってる店にいたらいいスクープよ!追加の買い物があるからって、アタシだけで買いに行ったの! ー
『あぁ、それなら良かっ···』
いや、待って!
姉鷺さんって···性別が···?!
姉 ーちょっと愛聖?アンタいま、軽くアタシに失礼な事を考えてない?大丈夫よ、アタシの行きつけのショップなんだから ー
行きつけのショップ?!
どんな用事で?!