第11章 スタートライン
❁❁❁ 小鳥遊音晴side ❁❁❁
僕ひとりで、と思っていたけど状況が変わって連れが増えた。
万理くんを誘おうかとも思ってたけど、三月くんに声を掛けられてるようだったから、それならその方がいいと思ったし。
万理くんは、彼らに年が近い。
そして、音楽活動にしても経験もある。
そんな万理くんだからこそ、なにか話を聞いてあげられることもあるだろうからね。
それより、僕たちが顔を見せた時の···あの愛聖さんの驚いた顔ときたら。
いや、驚くか。
何も予告せずに現れたんだからね。
Re:valeも連れて。
ここが八乙女の、元奥さんの実家だって事は僕も知ってる。
時々、配達にくる若者が楽くんだって事も本当は気付いてた。
けど、彼には彼の事情があるだろうし、気付かないフリをしていたんだけども。
紡くんは···本当に気付いてないみたいだけどね。
そんな状況のお店でお手伝いを···と連絡を受けた時、これはある意味いい機会なんじゃないか?と思って許可したけど···どういう方向に転がるのか楽しみでもある。
一般人に混ざってる僕たちに、どこまで素性を隠し通して店員になりきれるのか。
僕としては珍しい研修方法だけど、たまにはこんなのもいいかな?なんて思えるのは、愛聖さんが八乙女のところで経験を積んでいたからとか、そんな事も関係しているのかも知れない。
岡「2人とも、何にするか決まりましたか?」
百「オレは月見とろろ蕎麦とカツ丼!ユキは?」
千「僕?そうね···山菜そばとかやくご飯」
「じゃあ、お店の人を呼ぼうか。すみません、お願いしまーす」
厨房の方へと顔を向けて呼びかければ、中から愛聖さんが返事をしてくれる。
百「そう言えばさっきのって、絶対にマリーだよね?···社長さん、もしかしてマリーってバイトしてるの?!」
「アハハ···そんな話は聞いてないけどなぁ」
さて、ここからが僕の···密かな楽しみって所かな?
『すみません、お待たせしました。ご注文をどうぞ』
「じゃあ、僕から頼もうかな?僕は···」
お品書きを見ながら注文をしていけば、愛聖さんが本物の店員のように対応を始める。
さぁ、愛聖さん、キミの腕の見せどころだよ?
どこまで彼らを、はぐらかせるかな?