第11章 スタートライン
千「···愛聖?」
百「えっ?!あ!ホントだ!こんな所でなにしてんのマリー?って、あれ?その格好って、この店の?」
マズイ···バレた!!
『こ、こちらがお品書きになります。ご注文がお決まりになりましたら、お声掛け下さい···4名様ご来店でーす!』
早口になりつつも慌ただしくお品書き表を手渡し、愛想笑いを見せながら厨房へと駆け込む。
楽「客か?だったら、じいさん呼ばねぇと···」
『楽···落ち着いてよーく聞いて···というか、見て!ほら!』
厨房の中で客席を見て!とこっそり指させば···
楽「小鳥遊社長?!それにRe:valeまで?!
···どういう事だよ、これ」
『私だってビックリしてるよ!社長だけならまだしも、なんで岡崎さんや千たちがいるのかとか!とにかく、私はもう顔バレしてるから仕方ないけど、楽はみんなが帰るまでお店に顔出さない方がいいかも···じゃないと、いろいろバレたら都合悪いんでしょ?』
楽「あぁ、まぁ···な」
前に寮に配達に来た時だって、TRIGGERの八乙女楽とは別人だって、はぐらかしてたし!
どう見ても楽だったけど。
楽「だけど、お前は大丈夫なのか?お前んとこの社長はともかく、あのメンバーは」
『だ、大丈夫。なんとかする···ほら、忘れたの?私だって一応、女優の端くれだからね?ここはやっぱり、佐伯 愛聖 とは別人のフリを通すよ。じゃないと他のお客さんもいるし、正体バレたら騒ぎが···』
私の顔と名前がどうのって事よりも、それが引き金になって楽がTRIGGERの八乙女楽だとバレる事の方がリスクが大きい。
もしそれがバレてしまったら、今後このお店での楽の手伝いが出来なくなってしまうかも知れないし。
『とりあえず楽はおじいちゃん呼んで来て?お店の事は余程がない限り私が頑張るからさ?···ね?』
最悪うちの社長にだけなら、楽の事がバレてもなんとかなるかもだけど。
千や百ちゃんにバレたらと思うと、複雑な気持ちになる。
「注文お願いしまーす」
『はーい!』
そんな気持ちを知ってか知らずか、社長たちのテーブルからの呼び出しに返事をして、よし!とスイッチを入れて厨房から出て行った。